環境起学専攻

環境科学の開拓を目指す

2025年度沼口賞受賞者および選考理由

2026-03-18

2025年度沼口賞
受賞者: Manjate Guelso Mauro Armando
題 目: Investigating the Mechanisms of Rapid Intensification of Tropical Cyclones in the Mozambique Channel (モザンビーク海峡での熱帯低気圧の急発達機構の研究)

【選考理由】
 モザンビークとマダガスカルは、しばしば強い熱帯低気圧であるサイクロン(台風)に襲われ甚大な被害を受ける。両国の間にあるモザンビーク海峡では時にサイクロンの急発達がみられるが、全球的に熱帯低気圧の急発達の予測は難しいことが知られている。さらに、両国を襲う南インド洋のサイクロンについては、急発達に限らず全般に既往研究が乏しい。モザンビーク気象庁職員であるManjate氏は、同国のサイクロン被害を減らすために予測を向上させることを志し、休職して環境科学院に留学し研究に取り組んだ。
 本研究において同氏は、1981年から2025年の間に同海峡で急発達した24のサイクロンから多様性確保を念頭に3つのサイクロンを選び、領域気象モデルCReSSを用いて研究を実施した。進んでいる北太平洋や北大西洋の既往研究では、急発達には、海面水温の高さや広域での鉛直シアーの弱さなど、いくつかの外的要因(環境要因)が資することが知られている。同氏はこれら3つのサイクロンが、急発達に適した環境場の中で起こったことを確認したうえで、比較的弱い段階のサイクロンの内部構造がその後の発達に与える影響を調べるために数値実験を行った。ERA5再解析データを初期値・境界値に用いた事後予測(ハインドキャスト)を、初期時刻をずらして多数実施した。中でも初期値による違いが大きかった2022年のサイクロンGombeについて、発達前の内部構造に応じて発達の度合いがどのように変わるかを調べた。その結果、初期の最大風速半径が比較的大きく内部コアの外側の角運動量が大きいものが、その後の対流発達とそれにともなう内向き流による角運動量輸送で風速が増大することで急発達したことが明らかになった。
 本研究で得られた知見の普遍性を検証するにはさらに多数の実験が必要であるものの、予測向上のために注目すべき点を明らかにすることができ、警戒情報をより早く出せるようにする糸口が得られたと言える。また、同氏の経験は、現在は行われていないモザンビーク自前の数値天気予報の実現にもつながるものと期待される。以上の理由から、本論文は環境起学専攻の理念と目的に合致し、受賞に相応しいと認められた。

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