北海道大学 大学院 環境科学院

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【プレスリリース】樹のゲノムは虫のコミュニティを左右する

2018-03-16

本学院生物圏科学専攻の鍵谷進乃介さん(博士後期課程)と内海俊介准教授(北方生物圏フィールド科学センター)らの研究グループは、樹木の遺伝的な違いから、その樹上に生息する多様な昆虫の種の組合せを予測する法則を発見しました。

生物種の集合において、「どの種とどの種が同じエリアに生息するか(種の組合せ)」は場所や年によって異なるのが一般的です。また、種の組合せの違いによって、地域全体の生物多様性の豊かさは大きく変わってきます。つまり、種の組合せは、生物多様性を効果的に保全するうえで極めて重要な情報です。しかし自然生態系では、気象条件や多様な生物のつながりなど複雑な要素が影響するため、種の組合せの予測は一般に困難と考えられてきました。

そこで、内海准教授らは、樹木のゲノム情報からその樹上に集まる昆虫種の組合せの違いを予測するというアプローチによってこの問題に取り組みました。その結果、昆虫種の組合せは樹木の遺伝的な変異が大きいほど異なっており、その予測精度は、位置情報や周囲環境の効果をはるかに上回っていることがわかりました。また、年による虫の変化パターンも、樹木の遺伝的な変異から説明できました。樹木の遺伝的な変異は、昆虫―植物間や昆虫間の様々な生物間相互作用を通して昆虫群集全体に大きな波及効果を持っていたのです。これは、複雑な自然生態系において、植物の遺伝子が従来考えられていたよりはるかに強く生物の集合に影響していることを示す結果です。同時に、種内の遺伝的変異の損失という一見小さな事象でさえ、その地域の生物間の関係性に甚大な影響を及ぼすリスクが潜んでいることも示しています。

本研究成果は、2018年3月6日(火)公開のMolecular Ecology 誌(進化生物学・生態学の国際トップジャーナル)に掲載されました。

詳細については、以下のプレスリリースをご覧ください。
樹のゲノムは虫のコミュニティを左右する〜樹木の遺伝的な違いから昆虫種の組合せを予測〜(PDF)
Research Press Release (英語版)

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