【プレスリリース】北極の硝酸エアロゾルは NOx 排出抑制に関わらず高止まり
2018-01-24本学院地球圏科学専攻の飯塚芳徳助教(低温科学研究所)らの研究グループは、21 世紀になってからの北極の硝酸エアロゾルフラックス(流束)が、周辺国による NOx(窒素酸化物)の排出抑制政策を反映せず、高い値を維持していることを明らかにしました。
同グループは北極グリーンランド氷床にいくつかある頂上(ドーム)のうち、最も雪が多く降る南東部で約90mのアイスコア掘削に成功し、氷床ドームアイスコア史上最高の年代精度で過去60年間の北極大気環境を復元しました。このアイスコアに含まれる過去60年間のNO3–(硝酸イオン)の季節フラックスの変動を求め、各国からのNOx排出量の変動割合と比較したところ、両者は一致していませんでした。NOx排出量は1970–80年以降、減少傾向を示していますが、アイスコアのNO3–フラックスは1990 年代が最も高く、2000年以降(21世紀)は1960-80年代よりも高いという特徴があります。
今回の結果は、北極大気のNO3–フラックスが周辺国(米国や欧州)における排出抑制政策によるNOxの減少割合を反映せず、高い値を維持していることを示しています。今後、北極NO3–フラックスがNOx 排出量と連動せず高い値を維持している原因と、将来の人間活動への影響を評価する必要があります。
本成果は、2報の学術論文として、2017年10月26日と2018年1月4日(Web版)のJournal of Geophysical Research: Atmospheres 誌に掲載されています。
詳細については、以下のプレスリリースをご覧ください。
北極の硝酸エアロゾルは NOx排出抑制に関わらず高止まり〜過去60年のグリーンランド氷床に記録された北極大気NO3–フラックスの変遷〜(PDF)