温暖化する北極海から大陸に向かう水蒸気量の増加を発見
2022-11-28本学院環境起学専攻の佐藤友徳准教授(地球環境科学研究院及び北極域研究センター)と本研究院統合環境科学部門(研究当時)の中村 哲博士(現・気象庁大気海洋部)、三重大学大学院生物資源学研究科の飯島慈裕教授、名古屋大学宇宙地球環境研究所の檜山哲哉教授の研究グループは、海氷面積の縮小や海水温の上昇など、近年急速に温暖化が進行する北極海周辺における大気中の水蒸気の流れを解析し、北極海から蒸発した水蒸気がユーラシア大陸や北米大陸に向かって近年多く輸送されていることを解明しました。
北極域では地球全体の平均に比べて早いペースでの温暖化が進行しており、この傾向は今後も継続することが予測されています。このような北極の温暖化は様々な環境変化を誘発することが懸念されています。研究グループは特定の地域から蒸発した水蒸気の、大気中における動きを追跡できる数値計算手法を用いて、北極海から蒸発した水蒸気の輸送経路や輸送量を明らかにしました。
1981 年から 2019 年までの期間について解析したところ、北極海を起源とする水蒸気の輸送が 9 月から 12 月にシベリア地域で増加していることが分かりました。このことはシベリアにおける地域的な積雪増加傾向とも整合的であり、北極海の海氷減少や水温上昇が、ユーラシア大陸や北米大陸の水循環や生態系にも影響を与えることを示唆する結果と言えます。
なお、本研究成果は、2022 年 11 月 24 日(木)公開の npj Climate and Atmospheric Science 誌に掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
温暖化する北極海から大陸に向かう水蒸気量の増加を発見~北極の温暖化に伴う中・高緯度の気候変動や水循環過程の理解向上に寄与~(PDF)