ハスカップ種間雑種の果実でβ-クリプトキサンチンを合成
2022-11-22本学院生物圏科学専攻博士後期課程の藤田凌平氏、本学院生物圏科学専攻の星野洋一郎教授(北方生物圏フィールド科学センター)、同大学院医学研究院の神 繁樹特任助教と的場光太郎講師、による共同研究グループは、ハスカップの機能性成分の改変のために、近縁種のミヤマウグイスカグラとの種間雑種を育成し、ハスカップ種間雑種の果実でβ-クリプトキサンチンを合成させることに成功しました。
ハスカップは、北海道に自生する小果樹で、北海道特産のベリーとして注目されています。研究グループは、これまでにハスカップの遺伝資源の探索やハスカップの新規系統の育成を行ってきました。ハスカップ果実にはアントシアニン類が多く含まれていますが、赤色や黄色を呈するカロテノイド類はあまり含まれていません。そこで、カロテノイドを多く含み、赤い果実をつける、ハスカップの近縁種ミヤマウグイスカグラとの種間交雑を行いました。
解析の結果、種間雑種の果実でカロテノイドが合成され、ハスカップではほとんど検出されない機能性成分のβ-クリプトキサンチンが、種間雑種で合成されていることがわかりました。これは、ミヤマウグイスカグラのβ-クリプトキサンチン合成能がハスカップ種間雑種に付与されたことを示しています。また、種間交雑がハスカップの機能性成分の育種に有効であることを示すものであり、ハスカップに新たな付加価値を与えるものと考えられます。さらに興味深いことに、種間雑種の果実で、β-カロテンの含有量が両親よりも高くなっていました。また、種間雑種のβ-クリプトキサンチンの含有量は系統間差が大きく、β-クリプトキサンチンの合成能が高い系統の選抜により、β-クリプトキサンチンが豊富な果実を選ぶことができる可能性を示しています。
今後、ハスカップの機能性成分にカロテノイドの選択肢が加わることとなります。なお、本研究成果は、2022 年 9 月 29 日(木)公開の Scientia Horticulturae 誌に掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
ハスカップ種間雑種の果実でβ-クリプトキサンチンを合成~種間交雑によりカロテノイド生合成を改変・機能性成分を強化したハスカップの育種~(PDF)