北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

氷河ポンプが駆動するグリーンランドの海洋環境

2022-11-18

本学院地球圏科学専攻の杉山 慎教授、西岡 純教授 (いずれも低温科学研究所)、山下洋平准教授(地球環境科学研究院)、同大学低温科学研究所の王 鄴凡博士研究員、同大学院水産科学研究院の山口 篤准教授、松野孝平助教らの研究グループは、東京大学大気海洋研究所の漢那直也助教(元北海道大学北極域研究センター)と共同で、複数のカービング氷河が流入するグリーンランドのフィヨルドで観測を行い、氷河の激しい融解によってフィヨルドの基礎生産が活発になることを解明しました。

グリーンランドで記録的な氷河融解が起きた 2019 年の夏、氷河が流入するフィヨルドには窒素、リン、鉄分などの栄養素が前年より豊富にあり、大型植物プランクトンが大増殖しました。解析の結果、氷河の融け水に起因する海水の汲み上げ機能(氷河ポンプ)が強く働き、中層から栄養豊富な海水が大量に湧昇し、高い栄養環境で増殖する大型ケイ藻類が出現したことが分かりました。

この研究結果は、氷河の融解によってフィヨルドの栄養環境が良好になり、基礎生産が増加することを示しています。しかし長い目で見ると、温暖化によりグリーンランドからカービング氷河が失われてしまうと氷河ポンプは機能不全に陥るため、海洋生態系への甚大な影響が予想されます。従って氷河の融解が海洋環境に与える影響を、今後も注意深く観察し、理解を深める必要があります。

本研究成果は、2022 年 11 月 4 日(金)公開の Global Biogeochemical Cycles 誌にオンライン掲載されました

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
氷河ポンプが駆動するグリーンランドの海洋環境~氷河の融解加速により海のプランクトンの群集構造が変わる~(PDF)

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