北海道大学 大学院 環境科学院

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北極域の氷河が引き起こす洪水災害のしくみを解明~極北の集落カナック村に現れた気候変動の爪痕~

2021-03-01

本学院地球圏科学専攻博士後期課程の近藤研さんと同専攻の杉山慎教授(低温科学研究所)らの研究グループは,現地観測データと数値モデルによって,グリーンランドで氷河から流出する河川が引き起こした洪水のメカニズムを明らかにしました。

 

北極域では気温上昇に伴って氷河の融解が増加しています。氷河の融解は海水準の上昇や海洋環境の変化だけでなく,洪水災害などによって現地で暮らす人々にも影響を与えます。本研究を実施したグリーンランド極北の集落カナック村でも,2015年と2016年に村を流れる氷河流出河川が増水して,道路決壊や橋の流失などの被害が生じました。

 

そこで研究グループでは,氷河と河川の現地観測で得たデータに,日本における雪氷研究で培われた数値モデルを適用し,カナック村で洪水が発生した際の気象条件から河川流量を再現しました。その結果,2回の洪水は氷河の激しい融解と数年に一度の豪雨が原因と判明しました。また,2100年までに予測される4℃の気温上昇によって,河川への流出水量が現在の3倍に達することが明らかになりました。

 

以上の結果は,今後さらなる気温上昇や雨量増加が予測される北極域において,洪水のリスクがより深刻化する可能性を示しています。本研究成果によって,近年の気候変動が北極域の人間社会に及ぼす影響の理解が進み,極域に暮らす人々の安全な将来設計に貢献することが期待されます。

 

本研究成果は,2021217日(水)公開のJournal of Glaciology誌にオンライン掲載されました。なお,本研究は,ArCS北極域研究推進プロジェクト,ArCS II 北極域研究加速プロジェクトの助成を受けて実施されました。

 

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。

北極域の氷河が引き起こす洪水災害のしくみを解明~極北の集落カナック村に現れた気候変動の爪痕~(PDF)

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