魚類は餌生物を通じてマイクロプラスチックを大量に取り込む
2021-02-05本学院生物圏科学専攻修士課程の長谷川貴章さんと仲岡雅裕教授(北方生物圏フィールド科学センター)は,魚類が海水中から取り込むマイクロプラスチックの量について,水中から直接摂取するよりも,餌生物を介して摂取する方がはるかに多いことを明らかにしました。
プラスチックごみによる海洋汚染が世界中で進む中,特にマイクロプラスチックが海洋生物へ与える影響が懸念されています。魚類はマイクロプラスチックを海水中から直接取り込むだけでなく,餌を食べることで間接的に取り込みますが,2つの経路の相対的な重要性はこれまで不明でした。そこで本研究では,肉食性魚類シモフリカジカとその餌生物であるイサザアミ類を用いて,魚類のマイクロプラスチック摂取における餌生物を介した経路の重要性について検証しました。
その結果,シモフリカジカはマイクロプラスチックを含んだイサザアミ類の摂食により,水中から直接摂取するよりも3~11倍の量のマイクロプラスチックを取り込んでいることが判明しました。また,マイクロプラスチックがアミに取り込まれる過程で細粒化されるため,餌生物を介してカジカ体内に取り込まれるマイクロプラスチックは直接取り込むものより粒径が小さくなっていました。
マイクロプラスチックは細粒化されると体内組織に移行して悪影響を与えることが指摘されています。また,プラスチックは有害化学物質を含んでおり,これも食物連鎖を通じて濃縮することにより高次消費者へ影響を与える可能性があります。それらの影響に関する研究の進展が期待されます。
なお本研究成果は,2021年1月9日(土)公開のEnvironmental Pollution誌に掲載されました。詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
魚類は餌生物を通じてマイクロプラスチックを大量に取り込む~マイクロプラスチック汚染の食物連鎖を通じた波及効果を解明~(PDF)