【プレスリリース】冷温帯林の地表付近からの有機物放出が雲の生成を抑える証拠を発見
2017-08-22大気中の浮遊微粒子(エアロゾル)は雲の生成に大きな役割を果たしていますが、非常に多くの自然発生源をもちます。特に温暖化等の影響を受けやすい寒冷域の陸上生態系で発生する有機物は、雲の生成等を通して気候の変化に影響を与えるため、その起源や気候影響の理解が近年、特に重要視されています。本学院地球圏科学専攻のAstrid Müllerさん、宮崎雄三助教、生物圏科学専攻の日浦勉教授らのグループは冷温帯林の代表的な植生を有する北海道大学苫小牧研究林において長期的な大気観測を行い、大気エアロゾルが雲を生成する能力は微粒子に含まれる硫酸塩と水溶性有機物の質量比によって制御されることを明らかにしました。雲の生成を促進する硫酸塩と比べ、有機物の存在割合が相対的に大きくなる秋に、この生成能力が最小となることを発見し、この季節に土壌や落ち葉など森林内の地表付近から大気へ放出される有機物がエアロゾルの雲粒生成能力を抑制する可能性を初めて示しました。 従来、大気に対する影響要因としては植物の葉から放出される有機物が主要であるとの考えが主流でしたが、雲粒の生成能力に対する地表付近の有機物の重要性を初めて指摘した本研究の成果は、温暖化等による植生・土地利用の変化に伴う将来的な気候への影響を精度よく予測する上で重要な知見となることが期待されます。 本成果は、英科学誌『Scientific Reports』に掲載されています。
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冷温帯林の地表付近からの有機物放出が雲の生成を抑える証拠を発見(PDF)