北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

気象衛星ひまわりの超高頻度観測により台風の目の変化を検出~台風の強度推定と予報の向上への貢献に期待~

2023-06-15

ポイント

  • 気象衛星ひまわりの特別観測により、台風の目の中の風速の高頻度・高密度な検出に初めて成功。
  • 台風の目の中で風速を加速する新しいメカニズムを発見。
  • 開発した手法の活用により、台風強度の診断のさらなる向上と、台風予測の向上につながると期待。
ひまわり8号による2020年の台風10号の中心付近の可視画像の例。背景の白黒画像。白飛びしないように暗めに彩色。青系色の等高線は凡その雲頂高度(km)。等高線が混んでいるところの内側が目の中。

概要

本学院地球圏科学専攻大気海洋物理学気候力学コースの堀之内武教授(地球環境科学研究院)と気象庁気象研究所台風・災害気象研究部第一研究室などからなる研究グループは、気象衛星「ひまわり8号」を用い、30秒という非常に短い間隔で行われた特別観測をもとに、台風の目の中の風速の分布を高頻度・高密度に検出することに初めて成功しました。

同グループは、猛烈な勢力に発達したあと沖縄地方を襲い九州に接近して被害を引き起こした2020年の台風第10号(Haishen)の盛期を対象とする研究を実施し、目の中心付近の回転の速さが短時間に大きく変化したこと、その要因が、これまで見過ごされていた新しいメカニズムによることなどを明らかにしました。台風の予報は、防災上きわめて重要ですが、台風強度の予報は難しいことが知られています。その理由の一つは台風の実況把握が難しいことです。台風はその一生のほとんどを海上で過ごすため、主な観測手段は人工衛星になります。より良い実況把握と予報には、衛星観測とその利用法の向上が求められます。この研究で開発された手法は、今後、台風の変動過程に関する科学的な理解のさらなる増進に貢献し、台風の強度や構造の診断の向上につながること、それが台風の予測の向上につながることが期待されます。

なお、本研究成果は、2023年1月16日(月)の、Monthly Weather Review誌にオンライン掲載されました。

論文名:Stationary and Transient Asymmetric Features in Tropical Cyclone Eye with Wavenumber-1 Instability: Case Study for Typhoon Haishen (2020) with Atmospheric Motion Vectors from 30-Second Imaging(台風の目の中の定常及び非定常構造と波数1不安定:30秒撮像による大気追跡風を用いた台風Haishen(2020)のケーススタディ)
URL:https://doi.org/10.1175/MWR-D-22-0179.1

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