北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

グリーンランドの氷河で流出河川の流量を水音で測定~安価で信頼性の高い流量測定方法を提案~

2023-06-15

ポイント

  • 氷河から流出する融け水の量を音響センサのシグナルで測定することが可能。
  • 特に50~375 Hzの音の大きさが河川流量の指標となる。
  • 安価で設置も容易な音響センサが氷河融解や河川のモニタリングに活躍。
グリーンランド北西部カナック氷河の融け水。この水が流れる音を音響センサで測定した。

概要

本学院 地球圏科学専攻 雪氷・寒冷圏科学コース のエヴゲニ・ポドリスキ准教授(北極域研究センター)、博士前期課程の今津拓郎氏、杉山慎教授(低温科学研究所)らの研究グループは、グリーンランドの氷河から流出する河川で音響センサを使った測定を行い、河川の流量を音の大きさによって精度良く測定できることを明らかにしました。

夏のグリーンランドでは、氷河の融け水が川となって流れ出します。この河川の脇にセンサを設置して水音を測定したところ、音響シグナルの大きさと河川流量に極めて高い相関関係が判明しました。通常、河川の流量を知るために、高価な装置を激しい水流の中に設置し、冷たい水の中で人力による測定が行われます。本研究で提案する手法を使えば、安価で小さな装置を陸上に設置するだけで、長期間にわたって精度の良い流量観測が可能です。そのような利点を活かして、音響センサを多数の氷河に展開して長期間の測定を行えば、氷や雪の融解が進む北極域の研究で大きな武器となります。また観測地では氷河の融解や大雨によって洪水災害が発生しており、そのメカニズムの理解や、災害対策への応用も期待されます。

通常の河川の流量は、冷たい水流の中で大変な労力をかけて行う。本研究では、このようにして
測定した流量を、音響センサで記録したシグナルと比較した。(プレスリリース図2より)

本研究成果は、2023年4月26日(水)公開のGeophysical Research Letters誌にオンライン掲載されました。

論文名:Acoustic Sensing of Glacial Discharge in Greenland(グリーンランドの氷河から流出する河川の流量を音響シグナルによって測定)
URL:https://doi.org/10.1029/2023GL103235

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