北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

温暖化環境下において東南極氷床が融解し得ることを発見 ~海面が将来大幅に上昇するリスクへの警鐘~

2023-06-12

本学院地球圏科学専攻生物地球化学コースの飯塚睦氏(博士後期課程)、関宰准教授(低温科学研究所)、入野智久准教授(地球環境科学研究院)、山本正伸教授(地球環境科学研究院)、富山大学の堀川恵司教授、国立極地研究所菅沼悠介准教授、産業技術総合研究所の板木拓也研究グループ長、高知大学の池原実教授、ロンドン大学のデビット・J・ウィルソン博士、インペリアルカレッジのティナ・ファンデフリアート教授らの研究グループは、東南極沖の海底堆積物コアの解析から、地球表層が温暖化していた最終間氷期(13-11.5万年前)において、東南極の一部の氷床が後退し、当時の海面上昇に大きく寄与したことを解明しました。

近年の温暖化で、西南極氷床の融解は加速しており、今後これが数メートル規模の海面上昇につながる可能性があります。一方、東南極氷床は西南極氷床に比べて、温暖化に対して安定的だと考えられていました。しかし、近年になり東南極氷床の一部で融解が観測され始めたため、今後の温暖化により、東南極氷床の著しい融解が起きるかどうかに注目が集まっています。

そこで、本研究では、過去の温暖な時代(最終間氷期)の東南極氷床の変動を復元し、将来の温暖化で東南極氷床が縮小する可能性があるのかを検証しました。その結果、13-11.5万年前の最終間氷期に、東南極氷床の著しい縮小が2回発生していたことが明らかになりました。これらの氷床の縮小は、海面を約0.8m上昇させるほどの規模であったと見積もられました。よって、地球温暖化が持続した場合、西南極氷床だけでなく東南極氷床の一部も融解し、より大きな海面上昇が引き起こされる可能性があることが示されました。

本研究成果は、2023年4月18日(火)公開のNature Communications誌に以下のように掲載されています。

論文名:Multiple episodes of ice loss from the Wilkes Subglacial Basin during the Last Interglacial(最終間氷期におけるウィルクス海盆からの複数の氷床縮小エピソード)

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