北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

寄生虫に感染した魚は釣られなくなる?

2023-03-03

本学院生物圏科学専攻博士後期課程 2 年の長谷川稜太氏と同生物圏科学専攻の小泉逸郎准教授(地球環境科学研究院)は、口に寄生する甲殻類(サルミンコーラ)が、宿主である淡水魚イワナの釣られやすさに影響することを明らかにしました。特に、イワナの肥満度(コンディション)に応じて、寄生された時の釣られやすさが変化することを発見しました。

魚釣りは世界中で広く行われている経済・レジャー活動です。釣り人はより大きく、美しく、美味しい魚が釣れると満足度が高まります。一方、釣った魚の体表や口の中、あるいはお腹の中から寄生虫が出てくることがまれにあり、このような寄生虫は釣り人の満足度を低下させます。しかし、寄生虫に感染された魚が釣られやすくなるかどうかは、これまで全く注目されてきませんでした。一般に、寄生虫は宿主から栄養を奪うため、宿主の活動性が低下し感染魚は釣られづらくなると予測できます。特に本研究の対象種は口腔内に寄生するため、宿主魚類の採餌の邪魔になるとも考えられます。

そこで研究チームは、サルミンコーラに寄生されたイワナが実際に釣られづらくなるかどうかを調べました。調査の結果、寄生されたイワナの釣られやすさは魚のコンディションによって異なり、痩せている感染イワナは釣られづらくなり、逆に太っている感染イワナは釣られやすくなることが明らかとなりました。前者は餌を追う体力がなく活動性が低下するため、釣られなくなったと考えられます。一方、後者は寄生虫の感染により消費するエネルギーを補償するために積極的に餌を食べるようになった可能性があります。本研究の成果は、寄生と魚の釣られやすさの関係を科学的に示しただけでなく、寄生虫が釣り人の満足度や釣魚の食料消費にも影響しうることを示唆しています。

なお、本研究成果は、2023 年 2 月 21 日(火)公開の The Science of Nature 誌にオンライン掲載されました

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
寄生虫に感染した魚は釣られなくなる?~渓流河川のイワナで検証~(PDF)

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