北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

縁辺海から北太平洋に輸送される栄養素

2023-03-03

本学院地球圏科学専攻の山下洋平准教授(地球環境科学研究院)、西岡 純教授(低温科学研究所)は、オホーツク海とベーリング海の陸棚堆積物に由来する鉄分の主な形態が、中層水循環に伴い北太平洋へと長距離輸送される間に変化することを解明しました。

鉄分は海洋の光合成生物に必須な栄養素ですが、海水に溶けにくい性質を持ちます。北太平洋の亜寒帯域は鉄分が不足し、光合成生物の増殖が抑制されることが知られていますが、オホーツク海の堆積物から長距離輸送される鉄分がその抑制を緩和させていることが分かってきました。一方、海水に溶けにくい鉄分が、どのように輸送されているのかは不明で、その将来変化の予測は困難でした。

そこで研究グループは、極東ロシア海洋気象学研究所との国際共同観測などを実施して、オホーツク海とベーリング海、北太平洋の広範な海域における鉄分の濃度と鉄分を溶かす機能を有する腐植物質の濃度の分布を世界で初めて同時に観測し、両者の比較から鉄分の形態を評価しました。その結果、堆積物から海水へと移行した直後の鉄分は、粒子状やコロイド状が主な形態であるのに対し、中層水循環により長距離輸送され、亜熱帯循環域やアラスカ循環域に到達した鉄分は腐植物質との相互作用により溶けた状態であることが明らかになりました。

オホーツク海の堆積物から海水へと供給される鉄分の量は、オホーツク海の海氷生成と関係がある事が考えられています。オホーツク海の海氷生成量が減少すると、堆積物から海水へ供給される鉄分の量や形態が変化することが考えられるため、本研究成果は北太平洋への鉄分供給の将来変化を予測する上で重要な知見となります。

なお、本研究成果は、2023 年 2 月 22 日(水)公開の Journal of Geophysical ResearchBiogeosciences 誌にオンライン掲載されました。

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
縁辺海から北太平洋に輸送される栄養素~中層水による輸送中に鉄分の主な形態が変化する事を発見~(PDF)

  • 所在地・連絡先

    〒060-0810
    札幌市北区北10条西5丁目
    北海道大学大学院環境科学院/ 地球環境科学研究院
    【問い合わせ先・相談先】
  • 月別アーカイブ

  • カテゴリー別アーカイブ

北海道大学 大学院 環境科学院 / 地球環境科学研究院