北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

放流しても⿂は増えない

2023-02-09

本学院環境起学専攻の先崎理之助教(地球環境科学研究院)は、ノースカロライナ⼤学グリーンズボロ校の照井 慧助教、北海道⽴総合研究機構の⼘部浩⼀研究主幹、国⽴極地研究所(当時)の⻄沢⽂吾⽒と共同で、⿂のふ化放流は多くの場合で放流対象種を増やす効果はなく、その種を含む⽣物群集を減らすことを明らかにしました。

飼育下で繁殖させた在来種を野外に放す試みは、野外個体群の増強を⽬的として様々な動植物で⾏われています。特に、漁業対象種のふ化放流は、国内外に広く普及しています。⼀⽅、こうした放流では⾃然界には⽣じえない規模の⼤量の稚⿂を放つため、⽣態系のバランスを損ね、放流対象種を含む⿂類群集全体に⻑期的な悪影響を及ぼす可能性があることが懸念されています。

そこで研究チームは、シミュレーションによる理論分析と全道の保護⽔⾯河川における過去 21 年の⿂類群集データによる実証分析を⾏い、放流が河川の⿂類群集に与える影響を検証しました。実証分析で対象とした保護⽔⾯河川には、放流が⾏われていない河川とサクラマスの放流が様々な規模で⾏われている河川が含まれます。これらの分析の結果、放流は種内・種間競争の激化を促すことで、放流対象種の⾃然繁殖を抑制し、さらに他種を排除する作⽤を持つため、⻑期的に⿂類群集全体の種数や密度を低下させることが明らかになりました。本研究結果は、持続可能な⿂類の資源管理や⽣物多様性保全に対する放流の効果は限定的であり、⽣息環境の復元などの別の抜本的対策が求められることを⽰しています。

なお、本研究成果は、2023 年 2 ⽉ 7 ⽇(⽔)公開の Proceedings of the National Academy ofSciences 誌に掲載されました。

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
放流しても⿂は増えない 〜放流は河川の⿂類群集に⻑期的な悪影響をもたらすことを解明〜(PDF)

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