氷結晶の主軸方位分布を深さ 2400m にわたり詳細に分析
2022-10-21本学院地球圏科学専攻の飯塚芳徳准教授(低温科学研究所)を含む、国立極地研究所の猿谷友孝特任研究員を中心とする研究グループは、南極ドームふじ基地で掘削された深層アイスコアに含まれる氷の結晶の主軸方位分布を高精度で計測し、気候変動に伴った変化や含有不純物との関係性を明らかにしました。
これまでに掘削された様々なアイスコアでも結晶主軸方位分布の解析は行われてきましたが、測定方法の制約から細かい変動の検出は困難でした。研究グループは結晶主軸方位分布を解析する新たな手法として「誘電異方性計測法」を世界で初めて開発し(図 1)、これまでに類を見ない水準の高空間分解能かつ統計的信頼性をもった結晶主軸方位分布データが取得可能となりました。
氷の結晶の軸の方位は、氷床の浅い部分のアイスコアではばらつきが大きく、深くなるほどばらつきが小さくなって鉛直方向に揃っていくことが知られています。本研究では、高分解能での計測が可能な「誘電異方性計測法」を用いることにより、結晶主軸方位分布の深さ方向の変化は直線的ではなく、ばらつきが大きくなったり小さくなったりという“ゆらぎ”を繰り返しながら変化することを明らかにしました。さらに、深い部分のアイスコアほど“ゆらぎ”が大きいことや、今からおよそ 13 万年前や 24 万年前の間氷期から氷期へ移り変わる時期に、結晶の方位のばらつきが大きくなること、また、アイスコアの中に含まれる塩化物イオンの濃度や固体微粒子の数もばらつきの変化に関与していることが分かりました。
結晶主軸方位分布は、南極氷床の流動のしやすさに直接影響します。本成果は、将来の海面上昇予測に不可欠な、今後の氷床流動の予測に重要な知見です。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
氷結晶の主軸方位分布を深さ 2400m にわたり詳細に分析 〜南極ドームふじアイスコアで計測、氷床流動の理解に貢献~ (PDF)