「海のユニコーン」イッカクの行動の謎に迫る
2022-09-30本学院地球圏科学専攻のエヴゲニ ポドリスキ准教授(北海道大学北極域研究センター)らは、電子タグを装着したイッカクの行動を長期間にわたってモニタリングし、そのデータをカオス理論の数理技術を使って分析しました。その結果、潜水や海面での休息など、昼間の行動パターンが初めて明らかにされました。
イッカクは北極の海に生息する鯨類ですが、その変則的な行動を分析する方法は、センサーなどの技術が発達した現在でも乏しく、生息の実態はまだ不明な点が多いのが実情です。また、長期モニタリングのデータに基づいた研究例も、ごくわずかです。
ポドリスキ准教授は、グリーンランド天然資源研究所のMads Peter Heide-Jørgensen教授と共同で、極めて複雑だとされるイッカクの行動パターンを解明する手法を確立しました。この手法で83日間にわたるモニタリングを行い、得られたデータを解析した結果、特徴的な潜水スタイルや、昼間に海面近くで休息する行動が見られました。当初、これらは変則的な行動と考えられましたが、詳細なデータ分析から、通常のパターンであることが判明しました。
北極域は、温暖化や海氷減少など、深刻な環境変化の影響を強く受けてきました。イッカクもその例外ではなく、準絶滅危惧種に指定されています。本研究は、イッカクを含む、北極圏に生息する動物の保護をめぐる課題を浮き彫りにし、今後の対策の一助になると期待されています。
なお、本研究の成果は2022年9月22日(木)公開のPLOS Computational Biology誌にオンライン掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
「海のユニコーン」イッカクの行動の謎に迫る~行動パターンをカオス理論で解明。北極域での絶滅危惧種の保護対策に活用へ~(PDF)