北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

世界最大規模の氷河湖決壊を宇宙から発見!

2022-09-26

本学院博士後期課程(地球圏科学専攻)の波多俊太郎氏と本学院地球圏科学専攻の杉山慎教授(低温科学研究所)、同大学の日置幸介名誉教授(元理学研究院教授)らの研究グループは、人工衛星データ解析から南米チリ・パタゴニアで発生した氷河湖決壊洪水を発見し、その規模とメカニズムを明らかにしました。

人工衛星データを用いて同地域の氷河変動を解析中に、氷河が流れ込む湖としては世界で4番目に大きなグレーベ湖で、2020年4月に水位が約20メートル急激に低下したことが判明しました。さらなる解析から、同年7月までに3.7 km3の湖水が流出したことが示されました。この氷河湖決壊洪水は、人工衛星によって地球が観測されるようになって以来、世界最大規模のものです。高解像度の人工衛星画像などを駆使して決壊原因を調査したところ、地形の崩壊によって湖から流出する河川の流れが移動し、河床の侵食が進んで排水が起きたことが確認されました。さらに、GRACEと呼ばれる地球重力を測定する人工衛星のデータを解析した結果、排水による重力場の変化を捉えました。氷河湖決壊洪水に伴う質量変化が、GRACE衛星で観測されたのは初めてのことです。

パタゴニアでは急速に氷河が後退して氷河湖が拡大していますが、アクセスが困難で研究が十分に行われていません。研究グループは同地域での長い研究実績を活かして、稀に見る規模の氷河湖決壊を世界に先駆けて発見することに成功しました。この結果は、氷河湖の決壊による災害、氷河の将来変動、重力衛星による地球観測の可能性について、貴重なデータを提供するものです。

本研究成果は、2022年8月26日(金)公開の Communications Earth & Environment誌にオンライン掲載されました。

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。

世界最大規模の氷河湖決壊を宇宙から発見!~南米パタゴニアで起きた氷河湖の決壊洪水を世界に先駆けて衛星データで解明~(PDF)

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