南極の氷河の下で海と氷を直接観測~熱水掘削によって氷床融解のメカニズムを解明~
2021-07-13本学院地球圏科学専攻(低温科学研究所)の杉山慎教授,青木茂准教授,箕輪昌紘氏(当時)らの研究チームは南極ラングホブデ氷河を掘削し,厚さ234~412mの棚氷の下に広がる海を直接観測しました。その結果,棚氷底面での氷融解とそのメカニズムを明らかにしました。
近年,南極氷床が氷を失っており,海水準の上昇につながる地球環境変動として注目されています。氷床の周縁では氷が海に張り出して棚氷を形成し、その底面が海の熱で融けるプロセスが氷床変動の引き金と考えられています。しかし,厚い棚氷の下へ海水がどのように流入し,どれだけ氷を融かしているのか,その測定は非常に困難で理解が遅れています。本研究では,研究チームが開発した熱水掘削システムを用いて,ラングホブデ氷河の棚氷を4地点で掘削し,棚氷下の海水温,塩分,循環を直接観測しました。その結果,海水は結氷温度よりも最大1℃ほど暖かく,棚氷の全域で氷の融解が示されました。また棚氷の全域における測定によって,これまで予想されていた海洋循環の確認に成功しました。測定された貴重なデータは,棚氷下の海洋循環と底面融解の物理プロセスを検証し,氷床数値モデルの精緻化に貢献するものです。
本研究成果は,2021年7月9日(金)公開のNature Communications誌にオンライン掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。