北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

気候変動下における海洋生物の退避海域を発見~海洋生物多様性保全海域の選定への貢献に期待~

2021-05-07

本学院環境起学専攻の平田貴文特任准教授(北極域研究センター),同センターのアイリーン・アラビア博士研究員,ならびにアラスカ大学フェアバンクス校の国際共同研究グループは,1990年から2018年までの長期にわたって得られた159種の魚類や無脊椎動物の観測データを用いて,漁業が盛んで気候変動の脅威が継続している東ベーリング海の陸棚海域が,生物多様性の高い海域であることを発見しました。

 

過去約30年の間に北洋では大きな気候変動が起きています。特に,温暖化と海氷の激減は,生物群集組成を変え,生物多様性の再構成が余儀なくされています。研究グループが東ベーリング海陸棚海域を調査したところ,その北部と南部に,それぞれ生物多様性の高い海域が局所的に存在していました。それらの海域は,研究海域に占める面積が10%程度しかないにもかかわらず,調査種のうちの91%(159種中,144種)の生息地となっていました。さらに,それらの海域では商業魚種(スケトウダラやマダラ)やカニ類(ズワイガニなど)も多く,漁業資源の保護の点からもその海域の重要性が示されました。

 

また,研究グループは,これらの多様性の高い海域における観測データを用いた解析により,過去約30年間で冬季の海氷や水温変化が比較的小さい気候緩衝海域と一致していることを見出しました。

 

これらのことから,東ベーリング海で長期にわたって生物生産を維持できる緩衝された気候が,高い生物多様性と安定な群集構造の存在を許容していると考えられます。

 

本研究成果は,気候変動下で回復力のある海洋生態系及び持続的漁業を維持するために,海洋生物群集の気候変動退避海域(海洋生物が気候変動から逃げ込む海域)の同定および維持の重要性と必要性を提唱しています。

 

なお,本研究成果は,2021年4月25日(日)オンライン公開のGlobal Change Biology 誌に掲載されました。

 

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。

海洋観測カメラによる有色溶存有機物の観測に成功~超小型人工衛星を利用した北極域観測技術の構築に期待~(PDF)

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