都市のリス,どんな環境でパズルを解ける?~異なるストレス環境下でどう振る舞うか~
2021-03-31本研究院の博士研究員(在籍時)のPizza KA Chow 博士と内田健太博士,小泉逸郎准教授らの研究グループは,都市のどのような環境がリスの新規課題解決能力に影響するのかを明らかにしました。最近の研究から,都市に進出した鳥類や哺乳類が,本来の生息地に住む同種他個体と比べて柔軟に新規課題を解くことがわかってきました。一方で,どのような都市環境がこうした認知能力に影響するのかは不明なままでした。
研究グループはパズルボックスを北海道帯広市の複数の公園に生息するエゾリスに解かせるというユニークな手法を用いて,新規課題解決能力に及ぼす環境要因を検討しました。その結果,ヒトが多い都市公園ほどパズルを解く成功率が低下すること,公園の周りにビルなどの構造物が多いほど成功率が低下すること,エゾリスが多い公園ほど成功率が低下することが明らかとなりました。一方で,成功した個体は,パズルを解いている時に周りにヒトが多いほど,より短い時間でパズルを解きました。これらの結果は,ヒトが多いと一部の個体はパズルを解くのを諦める一方,一部の個体はより素早くパズルを解くことによってヒトとの接触を減らしていると推察できるかもしれません。
本成果は都市に生息する動物が本来と異なる環境下でどのように振る舞っているのかを理解する大きな手がかりとなります。また,一見ヒトとうまく共存しているように見える動物でもヒトを避けて暮らしていることが示唆され,都市環境における野生動物とヒトとの共存を考える上でも重要な知見です。
なお,本研究成果は,2021年3月31日(水)公開のProceedings of the Royal Society B誌にオンライン掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。