オホーツク海の高い生物生産は海氷の融解によることを解明
2021-03-30本学院地球圏科学専攻修士課程2年の岸紗智子さんと大島慶一郎教授・西岡純准教授(共に低温科学研究所)らの研究グループは,自動昇降する酸素センサー付きプロファイリングフロートにより,オホーツク海の広範囲を13年間にわたって連続観測を行い,海水中に溶けている酸素量の変動から,初めて正味の生物生産量(純群集生産量)を見積もることに成功しました。その見積もりによると,純群集生産量は春,直前に海氷が存在していた海域で圧倒的に大きい値になることが示され,春の植物プランクトンの顕著な大増殖(春季ブルーム)は海氷融解によってもたらされていることを初めて定量的指標をもって明らかにしました。この原因として,密度(塩分)の低い海氷融解水によって作られる強い成層(密度差)の他に,海氷が融解することで放出される物質(鉄分であることが有力)が重要であることも示唆されました。今回見積もられた海氷融解域での純群集生産量の値は,世界で最も顕著な春季ブルームが起こる南大洋氷縁域にも匹敵するもので,オホーツク海の高い生物生産を定量的な指標で示した結果でもあります。
本研究は科学研究費補助金・基盤研究S(課題番号 17H01157; 20H05707)の助成を受けて実施されました。なお,本研究成果は,2021年3月26日(金)公開のGeophysical Research Letters 誌にオンライン掲載されました。
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