氷河ポンプがフィヨルドの豊かな海洋生態系を支える
2020-10-05本学院地球圏科学専攻の杉山慎教授,西岡純准教授(低温科学研究所)および深町康教授(北極域研究センター)は,本学北方生物圏フィールド科学センターの野村大樹准教授,東京大学大気海洋研究所の漢那直也研究員(日本学術振興会特別研究員・元北海道大学北極域研究センター)と共同で,グリーンランドのカービング氷河から流出する,鉄分に富んだ融け水が,窒素,リンなどの栄養塩に富む海水と混ざって海面へ湧き上がり,夏の間のフィヨルドの生物生産に大きく貢献することを明らかにしました。
氷の融け水は,水深200mにある氷河の底からフィヨルドに流出し,その場の海水を巻き込んで湧昇します。ポンプを使ったように海面へ汲み上げられた融け水と海水は,周囲の海水に比べ鉄分と栄養塩を豊富に含んでおり,フィヨルドの広域に広がり植物プランクトンの増殖を促します。
カービング氷河が流入するグリーンランドのフィヨルドには,氷河の恵みを受けた豊かな生態系が広がっています。今後,北極域の温暖化が進行してカービング氷河が消失すれば,氷河の融け水による汲み上げポンプの機能が失われて生態系に大きな影響が予想されます。本研究は,グリーンランドで加速している氷河の融解が,フィヨルドの生態系に与える影響の理解への貢献が期待されます。
本研究成果は,2020年9月28日(月)公開のGlobal Biogeochemical Cycles 誌にオンライン掲載されました。なお,本研究は,ArCS北極域研究推進プロジェクト,ArCS II 北極域研究加速プロジェクト,日本科学協会の助成を受けて実施されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。