海洋コンベアベルトの終着点における栄養物質循環の解明
2020-05-28本学院地球圏科学専攻の西岡純准教授(低温科学研究所)と山下洋平准教授(地球環境科学研究院)は,東京大学大気海洋研究所および長崎大学の研究者らとともに,これまで明確には理解されていなかった,グローバルスケールの海洋循環(海洋コンベアベルト)の終着点に位置する北太平洋の栄養物質循環像を明らかにしました。
これまで北太平洋では,どのようなメカニズムを経て海洋表層に窒素やリンなどの栄養塩が供給され,生物活動が維持されているのかは良くわかっていませんでした。本研究では,これまでに予想されていた,深層に蓄積されている栄養塩が直接表層の高緯度海域を肥沃にしているという考えを覆し,ベーリング海で形成される中層水の栄養塩プールの形成と海峡部で起こる混合が,深層と表層の栄養塩を繋ぐ重要な役割を果たしていることを明らかにしました。この中層水由来の栄養塩とオホーツク海から流出する鉄分が混合することで,西部北太平洋の生物生産が高い状態で維持されていることが解明されました。本研究で見えてきた北太平洋の栄養物質循環像は,地球規模の海洋物質循環を解明する上で鍵となるエリアの理解を大きく進めます。今後,海洋における炭素循環,栄養物質循環,生態系の気候変動に起因する変化を理解する上で欠かせない知見となります。
本研究は,新学術領域研究「海洋混合学の創設」及び「新海洋像」,その他の科学研究費補助金,低温科学研究所共同利用開拓型研究の助成を受けて実施されました。
なお,本研究成果は2020年5月27日(水)公開の米国科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaにオンライン掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。