北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

気候変動が熱帯域諸国の魚類資源を奪う~今後の気候変動適応策へ新たな知見を与えることに期待~

2020-03-18

本学院環境起学専攻のホルへ ガルシア モリノス助教(北極域研究センター)らの研究グループは,気候変動によって水産魚種の分布域が変わることで,海域から流出する魚種の代わりに流入する魚種がいない熱帯域諸国において,多くの水産資源が失われる恐れがあることを見出しました。

海水温度が上昇するにつれ,魚類は適温環境を求めて温度が相対的に低い環境へ移動します。研究グループは,2015年から2100年までの温室効果気体排出シナリオを用いて,779の漁業対象魚種の生息分布域の変化を予測するコンピューターモデルを開発しました。このモデルによると,比較的緩やかな温室効果気体排出シナリオの場合,熱帯域諸国では2100年までに現在の魚種数の15%を失う恐れがあり,より過酷な排出シナリオの場合は40%以上も失う恐れがあります。また,北西アフリカの国々は魚種数の減少が最も大きく,東南アジア,カリブ海諸国,中央アメリカ諸国でもかなりの魚種数の減少に直面することが示されました。

科学者達は,現存する地域内・多国間・二国間政策などが,気候変動によって各国の管轄水域(排他的経済水域;EEZ)から流出する魚種の管理に必要な規定を盛り込んでいるかについて疑問を持っています。公表されている127の国際漁業協定を解析した結果,いずれも気候変動,魚類生息地の変化あるいは資源量に関して,直接的な記述をしているものはありませんでした。また,いくつかの協定では短期的な資源変動を管理する仕組みは含まれていましたが,現存する協定の中で魚類資源を失う国による乱獲を防ぐ長期的政策が含まれているものはありませんでした

 

本研究成果は,慎重な政策決定が必要な場面において新たな知見を与えると期待されます。

なお,本研究成果は,2020224日(月)公開のNature Sustainability誌に掲載されました。

 

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。

気候変動が熱帯域諸国の魚類資源を奪う~今後の気候変動適応策へ新たな知見を与えることに期待~(PDF)

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