北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

クローンゲノムが永続する仕組みを世界で初めて発見~クローン生物最大の欠点を克服~

2020-02-13

本学院生物圏科学専攻の宗原弘幸教授(北方生物圏フィールド科学センター)と博士後期課程(当時)の鈴木将太さんらの研究グループは,半クローン生物が組み換え世代を取り入れることで,ゲノムをリフレッシュし,遺伝的多様性を獲得していることを明らかにしました。

 

アイナメ属は,ホッケと並び,北海道を代表するアイナメ科の磯魚です。この仲間には6種が知られ,その他にスジアイナメとクジメのゲノムを持つ雑種の生息が最近明らかになりました。アイナメ属の野外雑種はすべて雌で,受精して成体になるまでは父種(クジメ)ゲノムも使いますが,卵形成過程で消失し,母種(スジアイナメ)ゲノムだけがクローン的に子に受け継がれます。アイナメ属雑種は,父種の雄と戻し交配をする限りクローンを保ちますが,母種の雄と交配するとスジアイナメゲノムが2セットになり,通常の減数分裂をする組み換え世代へ移行します。

 

本研究によって,雑種は両方の親種と同率で交配している(双方向戻し交配)ことが明らかになり,組み換え世代で有害変異の削減と遺伝的多様性を回復したのち,偶発的な交雑で半クローン世代に移行することが実証されました。本研究は,半クローン世代と有性生殖(遺伝子組み換え)世代を持つことで有害変異の削減と遺伝的多様性を回復するという仮説を実証し,クローンゲノムが永続的に存続できる仕組みを発見した世界で初めての研究です。

なお,本研究成果は,202017日(火)公開のEvolution誌にオンライン掲載されました。

 

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。

https://www.hokudai.ac.jp/news/200205_pr2.pdf

クローンゲノムが永続する仕組みを世界で初めて発見~クローン生物最大の欠点を克服~(PDF)

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