地球温暖化は高山植物群落の開花シーズンを短縮する
2019-09-12本学院生物圏科学専攻の工藤岳准教授は,市民ボランティアと共同で,北海道大雪山における高山植物の長期開花調査を行い,地球温暖化によって高山植物群落の開花期間が将来どのように変化するのかを予測しました。
高山植物の開花時期は温度や積雪期間の変化に敏感であるため,地球温暖化の影響を強く受けると予測されていますが,その実態と将来予測に必要なモニタリング例はごくわずかでした。そのため本研究では,環境省生物多様性センターが行っている生態系長期モニタリングプロジェクト「モニタリングサイト 1000」の高山帯調査の一環として,市民ボランティアによって集積された高山植物開花調査データを解析しました。詳細な開花状況と気温・積雪データの解析により,気候変動に対して高山植物群落の開花時期がどのような影響を受けるのかを予測しました。その結果,積雪の少ない場所に生える高山植物は気温の影響を強く受け,温度が高いほど開花の進行が早く,1 度の気温上昇により開花期間は約 4 日間短縮されると予測されました。一方で雪解けの遅い場所に生育する植物は,気温よりも雪解け時期の影響を強く受けることが明らかになりました。更に温暖化によって 1 度の気温上昇と 10 日間の雪解けの早期化が起こった場合,高山帯の開花時期は約 5 日間短縮されるという予測が得られました。温暖化に伴う高山植物群落の開花シーズンの短縮は,花を利用する昆虫へも影響が及ぶことが懸念されます。本研究は,市民ボランティアによる生態系モニタリングの有効性を実証したものとして重要な成果です。
本研究成果は2019年8月2日(金)公開のEnvironmental and Experimental Botany 誌に掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。