【プレスリリース】北海道最高峰の旭岳を染める彩雪の謎を探る〜藻類と細菌が織りなす生態系〜
2017-09-08北海道最高峰である旭岳では、雪解けが進む春、低温環境でも生育できる氷雪藻(ひょうせつそう)が作る色素により雪面が鮮やかに染まる、彩雪という現象が起こります。例えば、氷雪藻の光合成色素(葉緑素)は緑色に、補助色素(カロチノイド色素)の細胞内蓄積はオレンジや赤色に、それぞれ雪を彩ります。氷雪藻は日本の高山でも長く観察されていますが、旭岳の彩雪がどのような微生物群集(氷雪藻などの集まり)によるものかは明らかになっていませんでした。
本学院生物圏科学専攻の寺島美亜助教、博士後期課程の梅澤和寛さん、小島久弥助教、福井学教授(低温科学研究所)らの研究グループは、今回、旭岳で雪を採取し、次世代シーケンスによる微生物群集の解析と氷雪藻の単離を行いました。微生物群集解析からは、ベータプロテオバクテリアと呼ばれる種類の細菌が高い割合で氷雪藻と共存していたことが明らかになりました。また、単離に成功した氷雪藻を培養したところ、やはりベータプロテオバクテリアの細菌が検出されました。
本研究は、旭岳彩雪の原因となる微生物群集を確認しただけではなく、氷雪藻とベータプロテオバクテリアが互いに助け合っている可能性を明らかにしました。また、観光客が少ない融雪期の山岳地帯(旭岳「姿見の池」周辺)ならではの彩雪現象は、新たな観光資源にもなり得ます。
本成果は、微生物に関する専門誌『Frontiers in Microbiology』に掲載されています。
詳細については、以下のプレスリリースをご覧ください。
北海道最高峰の旭岳を染める彩雪の謎を探る〜藻類と細菌が織りなす生態系〜(PDF)