研究院アワー 2012年1月25日(水)地球温暖化への大規模な対策: 気候工学(ジオエンジニアリング)か、エネルギー技術革命か
2012-01-19日時: 2012年1月25日(水)17:00-18:00
場所: 地球環境講義棟 D103 (1F)
杉山 昌広(電力中央研究所・社会経済研究所)
テーマ: 地球温暖化への大規模な対策: 気候工学(ジオエンジニアリング)か、
エネルギー技術革命か
座長: 藤原正智(地球圏科学部門准教授)
要旨:
気候工学(ジオエンジニアリング)は「人為的な気候変動の対策として行う
意図的な惑星環境の大規模改変」である.地球温暖化対策として
人工的にCO2濃度を下げたり気温を低下させたりするという壮大な技術である.
緩和策・適応策の代替にはならないが,地球温暖化が危険な水準に達して
しまうリスクを踏まえ,欧米を中心に関心を呼んでいる.
気候工学は,太陽放射管理(SRM)と二酸化炭素除去(CDR)の二つに大別
される.SRM は太陽入射光を減らすことで気温を低下させる.CDR は二酸化
炭素のシンクを促進するか工学的回収をして地球温暖化の原因を除去する.
SRMの一つである成層圏エアロゾル注入については,国際的な研究プロジェクト
GeoMIP(気候工学モデル相互比較実験)も立ち上がった.
地球温暖化対策とはいえ,気候を直接改変する考えには,さまざまな
社会的な課題があり,科学技術ガバナンスが必要不可欠である.
研究者の自主的ガイドラインや国際法の枠組みなど,様々な国際的な
議論が始まっている.
気候工学が議論されるようになった背景には,国際的な気候政策が
目立った成果を上げていないことにある.歴史的に見ると
エネルギー技術の変化は数十年とかかり非常に遅い.今後
様々なイノベーションによってエネルギー技術革命がおこる可能性は否定
できないが,未来の排出削減の見通しは決して明るくない.