北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

研究院アワー2011年6月30日:東日本大震災の環境被害:特に放射能汚染について

2011-06-21

とき:2011年6月30日(木)17:00-19:00
ところ:北海道大学大学院環境科学院講義棟D101室
講演者:渡邉豊,池田元美,豊田和弘,長谷部文雄,田中俊逸
コメンテーター:古月文志、田中教幸
趣旨:
3月11日に起こった未曾有の東日本大震災は人的被害とともに、様々な物質の海洋への流出をもたらした。さらに、福島第一原発事故による放射性物質の環境への放出、それに続く汚染の広がりは、福島県民のみならず、日本全体に暗雲をもたらしている。今求められていることは、現在起こっていることを科学的に冷静に受け止めそれに対処することであり、このことこそがさらなる被害の拡大を防ぐとともに、日本復興の礎になるものである。しかし、個人で得られるこれらの情報は非常に限られており、ヒステリックな疑問や疑念がインターネット等に氾濫し、ひいては無関心を装う人々も日々増えている。

環境科学院諸氏においても多くの方々が放射性物質の汚染について疑問等があるものと考える。その疑問・疑念を解くひとつの場として意見・情報交換を行える場をここに企画した。
皆さんの参加を期待する。特に若手の皆さん、学院外の皆さんの積極的な参加を大いに歓迎する。

なお、7/1(金) 13:00-14:30 D102室において、外国人留学生対象のセミナーを池田が行う予定である。

発起人:渡邉豊、池田元美

「東日本大震災の環境被害:特に放射能汚染について」

17:00−17:05 趣旨説明:渡邉豊 (地球圏科学部門・准教授)

17:05−17:30 日本海洋学会の取り組み:海洋学会の東日本大震災と原発事故への対応:日本の海洋科学専門家は大震災にどう関わろうとするのか 池田元美
(北海道大学・名誉教授)

17:30-18:30 放射性核種の振る舞いと汚染影響評価 ( 各発表15分)
●陸水系や土壌中での放射性核種の振る舞いとその影響予測: 豊田和弘(統合環境科学部門・准教授)
●原発事故による放射性物質拡散についての気象学的考察:長谷部文雄(地球圏科学部門・教授)
●大気海洋への拡散とその観測の実情: 渡邉豊(地球圏科学部門・准教授)
●土壌汚染調査への参加報告と汚染除去について: 田中俊逸(統合環境科学部門・教授)

18:30-19:00 総合討議

コメンテーター:古月文志(統合環境科学部門・教授)、田中教幸(サステイナビリティ学教育研究センター・教授)

【池田要旨】*
日本海洋学会の取り組み*

マグニチュード9に達した地震に続き、津波が東北太平洋岸を襲ったため、15000
を越える人命が奪われてしまい、その数はさらに増え続けている。福島第一原子力発電所から放出されている放射性元素による海洋汚染は、どのくらい深刻であるのか、どのように拡がるのか、海洋環境と水産資源にどの程度の影響を与えるのか。海洋科学専門家の草の根から湧き出た何とかしようという熱意と、政府主導による緊急観測の開始、個々の研究者の研究を通じた貢献、そしてそれらをコーディネートする海洋学会の大震災対応ワーキンググループ(WG)を機能させなければいけない。

WGでは観測による試料収集とその分析を組織化し、モデリングを組み合わせて予測を推進する。現状の把握と将来予測を行うに当たっては、海洋科学だけに閉じることなく、大気、陸水、土壌、農学、水産など関連分野の専門家・学会と連携し、海洋科学専門家の英知を世界から広く結集する。さらに、原子力工学専門家と協力し海洋への放出過程と量を把握すると共に、放射線防護の専門家による生態系と人体への影響評価に資する情報を提供する。津波などによる放射性元素以外の汚染物質の海洋流出、および生態系の撹乱と回復についても、モニタリングを行う体制を整え、実態の把握と影響の推定を行う。

リスク・アセスメントに必要な情報を提供するには、市民に対し、正しい情報を理解できる言葉で語り、また論理的思考に基づく判断を可能とする。これらの活動の上に、政策決定に必要な情報を提供し、科学に基づいた提言を出すことまで目指す。
我が国から発せられた汚染が他国に及ぼす影響を調査することによって、各国の専門家と協力して影響の軽減を図る責務を果たす。

【豊田要旨】
*陸水系や土壌中での放射性核種の振る舞いとその影響予測*
軽水炉の使用済核燃料中にある放射性核種、それらの強度、半減期と物理的性質、放射線の種類と性格、天然にある放射性核種、放射能の単位、元素やイオンと
しての化学的性質と、環境中の、特に陸水系や土壌中での挙動、内部被爆と外部被爆、生物濃縮と生物蓄積、放射性廃棄物地層処分場建設の勧め、などについて
解説する。

【長谷部要旨】
*原発事故による放射性物質拡散についての気象学的考察*
大気中に放出された放射性物質は、生命に関わる直接的脅威であり、行政や専門家からの正確で迅速な情報提供が求められる。浪江町や飯舘村などの深刻な土壌汚染の主因は3月15日の相次ぐ爆発と推測されるが、現時点で入手可能な情報を頼りに、気象学的観点からこの事象に関する話題提供を試みたい。

【渡邉要旨】
*大気海洋への拡散とその観測の実情*
現在、国内で行われている大気・海水中放射性物質の採取法・測定法とともにそれらの測定結果を紹介し、そのデータの取扱と問題点について概説する。さらに、放射性物質の大気・海洋での振る舞いについても概説し、北海道・札幌周辺でのこれらの結果とその影響についての話題提供も行う。

【田中要旨】
*土壌汚染調査への参加報告と汚染除去について*
文部科学省が実施している福島第一原発事故による土壌汚染の実態調査にボランティアとして学生とともに参加した。調査の概要と土壌採取の様子や採取場所周辺の様子など写真を用いて報告する。また、今後の土壌汚染の汚染除去に関して、幾つかの話題提供を行う。

  • 所在地・連絡先

    〒060-0810
    札幌市北区北10条西5丁目
    北海道大学大学院環境科学院/ 地球環境科学研究院
    【問い合わせ先・相談先】
  • 月別アーカイブ

  • カテゴリー別アーカイブ

北海道大学 大学院 環境科学院 / 地球環境科学研究院