ロシア・カムチャッカ半島で最新の氷河変動を解き明かす
2022-07-12本学院地球圏科学専攻博士前期課程(研究当時)の福本峻吾氏と、本学院地球圏科学専攻の杉山慎教授(低温科学研究所)、三寺史夫教授、白岩孝行准教授らの研究グループは、人工衛星データによって、ロシア・カムチャッカ半島における氷河の質量変動を明らかにしました。
現在、世界各地の山岳地域で氷河の急激な衰退が報告されています。山岳域の氷河は地球上の氷総量の1%に過ぎませんが、その氷損失量は南極やグリーンランドの氷床よりもずっと激しく、21世紀の氷河氷床全融解量の80%を占めています。しかしながら、ロシア・カムチャッカ半島の氷河については研究例が少なく、氷河変動の正確な理解が求められていました。
そこで研究グループは、人工衛星データを使ってカムチャッカ半島全域で氷河の表面標高変化を解析し、2000~2016年の氷量変化を測定しました。その結果、21世紀に入って半島全域で4.9Gtの氷が失われ、0.013mmの海水準上昇に相当する融解水が流出したことが明らかになりました。また2010年以降は氷河の縮小が特に激しく、毎年1mを超える世界的にも顕著な質量減少が確認されました。また、気候変動の経年変化(太平洋十年規模振動)を解析した結果、同半島における氷減少が今後も加速することが示唆されました。以上の結果は、温暖化とそれに伴う気候変動に対して、カムチャッカ半島の氷河が敏感に反応していることを示します。本研究成果によって、海水準上昇の正確な把握と予測が実現し、カムチャッカ周辺の水文環境の理解が進むことが期待されます。
本研究成果は、2022年7月4日(月)公開のJournal of Glaciology誌にオンライン掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。