北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

高山植物がきれいなのは虫に花粉を運ばせるためだった

2022-05-16

本学院生物圏科学専攻の工藤 岳准教授(地球環境科学研究院)は,日本最大の高山生態系を有する北海道大雪山系で30年におよぶ高山植物の生態調査の結果,虫媒花植物の多くが他家受粉に特化していることを突きとめました。寒冷な高山環境では昆虫の活性が低いため,高山植物は十分な受粉サービスを受けられず,自家受粉によって子孫を残す種が多いのではないかと考えられてきました。ところが40種以上の高山植物を調べた結果,全体の85%の種は自殖能力を持たず,他殖のみを行っていることが明らかになりました。これは,陸域生態系全般で見られる傾向よりも顕著に他家受粉に偏ったものであり,高山植物の繁殖システムを根本的に見直す必要性を示唆するものです。

ほとんどの高山植物はハエ・アブ類かマルハナバチに花粉媒介を頼っていますが,両媒花グループで結実率の季節的傾向は異なりました。ハエ媒花植物では季節的な傾向が見られなかったのに対し,ハチ媒花植物の結実率は季節進行と伴に顕著に増加していました。生育期前半に開花すると受粉がうまく行われず,結実が制限されていた一方で,働きバチが現れる生育期後半に開花すると,結実率は大きく高まりました。ハチ媒花植物の種子生産はハチの季節性に強く依存しており,今後の気候変動で高山植物の開花時期が早まると,ハチと植物の共生関係が崩壊する可能性があります。

本研究成果は,2022年5月9日(月)公開のEcological Research誌にオンライン掲載されました。

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。

高山植物がきれいなのは虫に花粉を運ばせるためだった ~他家受粉に特化した高山植物の繁殖システムを解明~(PDF)

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