北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

北極温暖化の遠隔影響により梅雨期の降水量が増加することを発見

2022-03-14

北海道大学北極域研究センターの安成哲平准教授,同大学院工学院修士課程の若林成人氏(研究当時),同低温科学研究所の的場澄人助教,名古屋大学の松見 豊名誉教授(宇宙地球環境研究所)らの研究チームは,パナソニック製の小型PM2.5センサーを搭載した,寒冷地でも動作温度環境を自動で保つことが可能な自動温度制御断熱ボックスを開発しました(以下,PM2.5測定装置)。室内及び低温室における動作確認・検証実験や,冬季札幌・夏季アラスカでの現地観測による,現地の独立したPM2.5観測データとも比較検証を行うことで非常に寒冷な環境や,森林火災のような高濃度PM2.5環境下においてのPM2.5測定にも,開発した装置が十分実用的であることを確認しました。

北極圏では,夏季森林火災から冬季気温の逆転層形成による大気汚染まで,通年を通じてPM2.5の測定が求められていますが,これまでは厳冬期の観測が非常に困難でした。本研究で開発した寒冷地仕様のPM2.5測定装置は,温度コントローラーの設定温度より少し低くなると,装置内部がヒーターで自動で温められ,外部が極寒でも内部をPM2.5センサー動作環境に保つことができるため,冬季や通年で寒冷な場所でPM2.5観測を安定かつ継続して行うことが可能になります。また,開発実験では,防水ファンによる強制通風が必須であることがわかりました。北海道大学低温科学研究所の−25℃の低温室実験では,ヒーターが正常に動作し,通風口2つの条件で内部の温度環境をプラスに保つことができることも確認しました。さらに,2019年2月に北海道大学工学部屋上で観測を行い,環境省国設局「国設札幌」で測定されたPM2.5の1時間値(確定値)の変動と比較したところ,本研究のPM2.5測定結果の1時間平均値と変動が整合的であることも確認できました。2019年6月からは,アラスカ大学フェアバンクス校(UAF)国際北極圏研究センター(IARC)に同PM2.5測定装置を設置し,夏季(6-7月)アラスカの森林火災時の高濃度PM2.5変動を捉えることに成功しました。

今後,冬季に寒冷になるアラスカやグリーンランドなどの北極圏及び南極など通年で寒冷な場所でも,安定にPM2.5の継続観測を行うことが可能となり,PM2.5測定が希薄な極寒の地域での観測展開が大いに期待されます。

なお、本研究成果は,2022年3月10日(木)公開のJournal of Environmental Management誌に掲載されました。

 

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。

極寒の地域でも使用可能なPM2.5測定用の自動温度制御断熱ボックスを開発~アラスカなどの北極圏から南極まで今後の測器展開と寒冷地PM2.5定常観測の発展に期待~(PDF)

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