北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

北極温暖化の遠隔影響により梅雨期の降水量が増加することを発見

2022-02-28

北海道大学大学院地球環境科学研究院の中村 哲博士研究員,佐藤友徳准教授の研究グループは,気候モデル実験や気象庁の予報データの分析による多角的な調査を行い,令和27 月豪雨(20207月)の原因の一つとして北極温暖化の影響があることを発見しました。

2020 年夏6月下旬にシベリアで記録的な熱波が観測され,その直後の7月上旬には中国の長江流域や日本の九州を中心とした地域で記録的な大雨が起こり,大きな被害が出ました。本研究では,シベリアで熱波を引き起こしたブロッキング高気圧に着目し,その発達度合いが大きいほど梅雨前線帯の降水量が強まることを発見しました。気象庁の全球アンサンブル予報データを分析し,ブロッキング高気圧の予測が現実的になるように補正することで,当初の予測では過小評価していた豪雨時の降水量が最大で20%増加し,予測精度が向上しました。さらに,北極温暖化が進行することを仮定した気候予測シミュレーションを行ったところ,シベリアでのブロッキング高気圧の発生頻度が増加し,東アジアの夏の降水量も増加することがわかりました。

北極温暖化は雪氷や永久凍土の融解など北極圈に多大な影響を及ぼすことが知られていますが,これに加えて,大気循環を介した遠隔影響の結果,日本周辺の豪雨災害とも関連することがわかりました。本研究の成果は,これまであまり着目されていなかった北極域から中緯度地域への遠隔影響の一端を明らかにしたことに加え,その影響を気象予報技術に応用することで,豪雨災害の予測精度向上に寄与することが期待されます。

なお,本研究成果は202223日(木)公開の Environmental Research 誌にオンライン先行公開されました。

 

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。

 

北極温暖化の遠隔影響により梅雨期の降水量が増加することを発見 ~豪雨災害の予測にむけて新たなメカニズムを提唱~(PDF)

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