北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

冬眠哺乳類の低温耐性にビタミンEが関わることを発見

2021-07-05

本学院生物圏科学専攻の山口良文教授(低温科学研究所),東京大学大学院薬学系研究科博士後期課程(当時)の姉川大輔氏,三浦正幸教授らの研究グループは,冬眠する小型哺乳類シリアンハムスターが冬眠の際の低体温に耐えるためにビタミンEを肝臓に高い濃度で保持することを明らかにしました。

 

シリアンハムスター,シマリス,ジリス,ヤマネなどの小型冬眠哺乳類は,数ヶ月に渡る冬季のあいだ,体温が10ºC以下に低下した深冬眠と呼ばれる低温状態で何日間も過ごします。またこの深冬眠から目覚める際には,体内で熱を多量に作り出すことで体温を37ºC付近まで急激に復温させます。こうした長時間の低温や急激な復温は,私たちヒトを含む冬眠しない哺乳類には致命的なストレスとなります。なぜ冬眠する哺乳類が低温や急激な復温に耐えることができるのか,その仕組みの殆どは未だに不明ですが,これらの動物は細胞レベルでも低温耐性を示すことが幾つかの事例から知られています。そこで研究グループはまず,シリアンハムスターの肝臓の細胞(肝細胞)も,低温培養下で長期生存可能な低温耐性を有することを確認しました。さらに,ビタミンEの少ない餌で飼育されたシリアンハムスターの肝細胞は低温誘導性の細胞死を生じ,この現象はビタミンE投与で回復すること,つまりシリアンハムスターの低温耐性は餌中に含まれるビタミンE量に依存することを発見しました。また低温耐性の異なるシリアンハムスターとマウスの間で,餌由来のビタミンEの保持能力に差があることを見出しました。本研究成果は,ヒトにおける臓器移植や再生医療の際の臓器低温保存や,低体温に伴う障害の予防法の開発にもつながると期待されます。

 

本研究成果は,2021年6月25日(金)公開のCommunications Biology誌にオンライン掲載されました。

 

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。

冬眠哺乳類の低温耐性にビタミン E が関わることを発見~臓器移植・臓器保存への貢献に期待~(PDF)

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