北海道大学 大学院 環境科学院

環境科学の座標軸を提示する

早い春の訪れは植物と送粉性昆虫との共生関係を破壊する~温暖化による生物の季節撹乱を解明~

2019-06-28

本学院生物圏科学専攻の工藤岳准教授とノルウェー北極大学のElisabeth Cooper教授は,春の雪解けが早まると春咲き植物(エゾエンゴサク)の開花日と,花粉運搬者であるマルハナバチの出現日が一致しなくなり,受粉に影響が出ることを明らかにしました。

 

地球温暖化は多くの生物の季節性に影響を及ぼすことが知られており,関連し合う生物種間の関係にも影響が及ぶ可能性が指摘されています。しかし,その実態とメカニズムについてはまだ不明な点が多く,特に植物と花粉媒介昆虫の季節撹乱に関する研究例はわずかです。

 

本研究では,北海道の森に生育する春咲き植物のエゾエンゴサクと,越冬直後にそれを蜜源として利用するマルハナバチの出現時期の同調性に着目し,春の雪解け時期と温度環境が両者の季節性にどのような影響をもたらすかを調べました。エゾエンゴサクの開花時期は雪解け時期に強く規定され, 雪解けが早い年には開花が早く起こります。一方で,地中で冬眠するマルハナバチは地温が6度に達した時に活動を始めることがわかりました。通常は開花時期とハチの出現時期は一致しますが,雪解けが異常に早く起こった年には植物の開花が先行し,その結果,受粉がうまく行われずに種子生産が低下することが判明しました。この結果は,温暖化により春の雪解けが早まると植物と花粉媒介昆虫の共生関係が崩壊するリスクが高まることを示唆するものです。

 

本研究成果は,協定世界時2019年6月12日(水)公開のProceedings of the Royal Society B誌に掲載されました。

 

詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。

早い春の訪れは植物と送粉性昆虫との共生関係を破壊する~温暖化による生物の季節撹乱を解明~(PDF)

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