環境科学の座標軸を提示する
Hokkaido University issued a press release regarding the research conducted by the research group including Assoc. Prof. Teppei Yasunari (Divisions of Earth System Science).
URL: https://rmets.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/asl.1231
Detail (Japanese): https://www.hokudai.ac.jp/news/2024/03/pm25-1.html
Hokkaido University issued a press release regarding the research conducted by the research group including Assoc. Prof.Yoshihiro Nakayama(Divisions of Earth System Science ).
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-024-47084-z
Detail (Japanese): https://www.hokudai.ac.jp/news/2024/04/post-1426.html
本学院地球圏科学専攻大気海洋物理学気候力学コースの堀之内武教授(地球環境科学研究院)と気象庁気象研究所台風・災害気象研究部第一研究室などからなる研究グループは、気象衛星「ひまわり8号」を用い、30秒という非常に短い間隔で行われた特別観測をもとに、台風の目の中の風速の分布を高頻度・高密度に検出することに初めて成功しました。
同グループは、猛烈な勢力に発達したあと沖縄地方を襲い九州に接近して被害を引き起こした2020年の台風第10号(Haishen)の盛期を対象とする研究を実施し、目の中心付近の回転の速さが短時間に大きく変化したこと、その要因が、これまで見過ごされていた新しいメカニズムによることなどを明らかにしました。台風の予報は、防災上きわめて重要ですが、台風強度の予報は難しいことが知られています。その理由の一つは台風の実況把握が難しいことです。台風はその一生のほとんどを海上で過ごすため、主な観測手段は人工衛星になります。より良い実況把握と予報には、衛星観測とその利用法の向上が求められます。この研究で開発された手法は、今後、台風の変動過程に関する科学的な理解のさらなる増進に貢献し、台風の強度や構造の診断の向上につながること、それが台風の予測の向上につながることが期待されます。
なお、本研究成果は、2023年1月16日(月)の、Monthly Weather Review誌にオンライン掲載されました。
論文名:Stationary and Transient Asymmetric Features in Tropical Cyclone Eye with Wavenumber-1 Instability: Case Study for Typhoon Haishen (2020) with Atmospheric Motion Vectors from 30-Second Imaging(台風の目の中の定常及び非定常構造と波数1不安定:30秒撮像による大気追跡風を用いた台風Haishen(2020)のケーススタディ)
URL:https://doi.org/10.1175/MWR-D-22-0179.1
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本学院 地球圏科学専攻 雪氷・寒冷圏科学コース のエヴゲニ・ポドリスキ准教授(北極域研究センター)、博士前期課程の今津拓郎氏、杉山慎教授(低温科学研究所)らの研究グループは、グリーンランドの氷河から流出する河川で音響センサを使った測定を行い、河川の流量を音の大きさによって精度良く測定できることを明らかにしました。
夏のグリーンランドでは、氷河の融け水が川となって流れ出します。この河川の脇にセンサを設置して水音を測定したところ、音響シグナルの大きさと河川流量に極めて高い相関関係が判明しました。通常、河川の流量を知るために、高価な装置を激しい水流の中に設置し、冷たい水の中で人力による測定が行われます。本研究で提案する手法を使えば、安価で小さな装置を陸上に設置するだけで、長期間にわたって精度の良い流量観測が可能です。そのような利点を活かして、音響センサを多数の氷河に展開して長期間の測定を行えば、氷や雪の融解が進む北極域の研究で大きな武器となります。また観測地では氷河の融解や大雨によって洪水災害が発生しており、そのメカニズムの理解や、災害対策への応用も期待されます。
本研究成果は、2023年4月26日(水)公開のGeophysical Research Letters誌にオンライン掲載されました。
論文名:Acoustic Sensing of Glacial Discharge in Greenland(グリーンランドの氷河から流出する河川の流量を音響シグナルによって測定)
URL:https://doi.org/10.1029/2023GL103235
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本研究院の田村健太博士研究員、佐藤友徳准教授(環境起学専攻人間・生態システムコース、地球環境科学研究院)の研究グループは、機械学習を用いて過去44年分の日々の気象データを解析し、気温や大気中に含まれる水蒸気量の長期的な変化の傾向を気圧配置毎に分けて評価することに成功しました。これにより、北海道周辺における長期的な気温の上昇は、いわゆる西高東低の冬型の気圧配置の場合には、冬季平均の3倍以上のペースで進行していることが分かりました。
従来から知られているように、冬型の気圧配置では、ユーラシア大陸やオホーツク海からの寒気の流入により、日本海側の地域を中心に厳しい寒さや大雪となることがあります。本研究では、日本に流入する寒気の起源が気圧配置毎に異なることに着目し、日本周辺における気温や水蒸気量の経年変化を気圧配置毎に解析しました。オホーツク海を起源とする寒気が日本に流入するような気圧配置の日に着目して調べたところ、北海道周辺の気温の上昇率は、冬季平均の上昇率に比べて3倍以上大きく、同時に大気中の水蒸気量も増加していることが分かりました。水蒸気量の増加は降水量の増加に繋がりうることから、本成果は、大雪などの顕著現象に対する地球温暖化の影響を正確に見積もる、新たな手法の開発に繋がることが期待されます。
なお、本研究成果は、2023年6月6日(火)公開のGeophysical Research Letters誌に掲載されました。
論文名:Localized Strong Warming and Humidification over Winter Japan Tied to Sea Ice Retreat(海氷の後退による冬季日本の局所的な強い温暖化と湿潤化)
URL:https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2023GL103522
本学院地球圏科学専攻生物地球化学コースの飯塚睦氏(博士後期課程)、関宰准教授(低温科学研究所)、入野智久准教授(地球環境科学研究院)、山本正伸教授(地球環境科学研究院)、富山大学の堀川恵司教授、国立極地研究所菅沼悠介准教授、産業技術総合研究所の板木拓也研究グループ長、高知大学の池原実教授、ロンドン大学のデビット・J・ウィルソン博士、インペリアルカレッジのティナ・ファンデフリアート教授らの研究グループは、東南極沖の海底堆積物コアの解析から、地球表層が温暖化していた最終間氷期(13-11.5万年前)において、東南極の一部の氷床が後退し、当時の海面上昇に大きく寄与したことを解明しました。
近年の温暖化で、西南極氷床の融解は加速しており、今後これが数メートル規模の海面上昇につながる可能性があります。一方、東南極氷床は西南極氷床に比べて、温暖化に対して安定的だと考えられていました。しかし、近年になり東南極氷床の一部で融解が観測され始めたため、今後の温暖化により、東南極氷床の著しい融解が起きるかどうかに注目が集まっています。
そこで、本研究では、過去の温暖な時代(最終間氷期)の東南極氷床の変動を復元し、将来の温暖化で東南極氷床が縮小する可能性があるのかを検証しました。その結果、13-11.5万年前の最終間氷期に、東南極氷床の著しい縮小が2回発生していたことが明らかになりました。これらの氷床の縮小は、海面を約0.8m上昇させるほどの規模であったと見積もられました。よって、地球温暖化が持続した場合、西南極氷床だけでなく東南極氷床の一部も融解し、より大きな海面上昇が引き起こされる可能性があることが示されました。
本研究成果は、2023年4月18日(火)公開のNature Communications誌に以下のように掲載されています。
論文名:Multiple episodes of ice loss from the Wilkes Subglacial Basin during the Last Interglacial(最終間氷期におけるウィルクス海盆からの複数の氷床縮小エピソード)
本研究院の甲山隆司名誉教授は、東京大学大学院農学生命学研究科・生圏システム学専攻の甲山哲生助教をはじめとするワーゲニンゲン大学・群馬大学など内外の共同研究者と共に、インドネシアやマレーシアの熱帯林から台湾や沖縄の亜熱帯林、そして鹿児島の暖温帯林から北海道の亜寒帯林に至る 60 の森林の継続調査のデータを用いた解析から、より温暖な森林ほど、相対的な(炭素量当たりの)年間炭素生産量が高い低木性樹種の比率が高くなることによって、同じ樹木炭素量を持つ森林の炭素生産量がより高くなることを明らかにしました。
従来の研究では、気温と樹木種多様性、そして森林生産の間の相関関係を示すに留まっていましたが、樹木種レベルの生産に注目した本研究では、これらの間の結びつきをはじめて機能的に解明しました。自然林の持続的管理では、炭素量が大きく、生産量も大きい高木種の保全が強調されてきましたが、本研究によって、低木種を含む樹木種多様性の保全が森林生産量の維持にとって重要であることが明らかにされました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
なぜ温暖な森林は生産量が大きいのか? ――樹木群集の炭素量分布が森林の生産量に貢献する――(PDF)
本学院生物圏科学専攻博士後期課程 2 年の長谷川稜太氏と同生物圏科学専攻の小泉逸郎准教授(地球環境科学研究院)は、口に寄生する甲殻類(サルミンコーラ)が、宿主である淡水魚イワナの釣られやすさに影響することを明らかにしました。特に、イワナの肥満度(コンディション)に応じて、寄生された時の釣られやすさが変化することを発見しました。
魚釣りは世界中で広く行われている経済・レジャー活動です。釣り人はより大きく、美しく、美味しい魚が釣れると満足度が高まります。一方、釣った魚の体表や口の中、あるいはお腹の中から寄生虫が出てくることがまれにあり、このような寄生虫は釣り人の満足度を低下させます。しかし、寄生虫に感染された魚が釣られやすくなるかどうかは、これまで全く注目されてきませんでした。一般に、寄生虫は宿主から栄養を奪うため、宿主の活動性が低下し感染魚は釣られづらくなると予測できます。特に本研究の対象種は口腔内に寄生するため、宿主魚類の採餌の邪魔になるとも考えられます。
そこで研究チームは、サルミンコーラに寄生されたイワナが実際に釣られづらくなるかどうかを調べました。調査の結果、寄生されたイワナの釣られやすさは魚のコンディションによって異なり、痩せている感染イワナは釣られづらくなり、逆に太っている感染イワナは釣られやすくなることが明らかとなりました。前者は餌を追う体力がなく活動性が低下するため、釣られなくなったと考えられます。一方、後者は寄生虫の感染により消費するエネルギーを補償するために積極的に餌を食べるようになった可能性があります。本研究の成果は、寄生と魚の釣られやすさの関係を科学的に示しただけでなく、寄生虫が釣り人の満足度や釣魚の食料消費にも影響しうることを示唆しています。
なお、本研究成果は、2023 年 2 月 21 日(火)公開の The Science of Nature 誌にオンライン掲載されました
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
寄生虫に感染した魚は釣られなくなる?~渓流河川のイワナで検証~(PDF)
本学院地球圏科学専攻の山下洋平准教授(地球環境科学研究院)、西岡 純教授(低温科学研究所)は、オホーツク海とベーリング海の陸棚堆積物に由来する鉄分の主な形態が、中層水循環に伴い北太平洋へと長距離輸送される間に変化することを解明しました。
鉄分は海洋の光合成生物に必須な栄養素ですが、海水に溶けにくい性質を持ちます。北太平洋の亜寒帯域は鉄分が不足し、光合成生物の増殖が抑制されることが知られていますが、オホーツク海の堆積物から長距離輸送される鉄分がその抑制を緩和させていることが分かってきました。一方、海水に溶けにくい鉄分が、どのように輸送されているのかは不明で、その将来変化の予測は困難でした。
そこで研究グループは、極東ロシア海洋気象学研究所との国際共同観測などを実施して、オホーツク海とベーリング海、北太平洋の広範な海域における鉄分の濃度と鉄分を溶かす機能を有する腐植物質の濃度の分布を世界で初めて同時に観測し、両者の比較から鉄分の形態を評価しました。その結果、堆積物から海水へと移行した直後の鉄分は、粒子状やコロイド状が主な形態であるのに対し、中層水循環により長距離輸送され、亜熱帯循環域やアラスカ循環域に到達した鉄分は腐植物質との相互作用により溶けた状態であることが明らかになりました。
オホーツク海の堆積物から海水へと供給される鉄分の量は、オホーツク海の海氷生成と関係がある事が考えられています。オホーツク海の海氷生成量が減少すると、堆積物から海水へ供給される鉄分の量や形態が変化することが考えられるため、本研究成果は北太平洋への鉄分供給の将来変化を予測する上で重要な知見となります。
なお、本研究成果は、2023 年 2 月 22 日(水)公開の Journal of Geophysical ResearchBiogeosciences 誌にオンライン掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
縁辺海から北太平洋に輸送される栄養素~中層水による輸送中に鉄分の主な形態が変化する事を発見~(PDF)
オホーツク海は北半球で最も南まで海氷(流氷)が到達する海域です。冬季から春先にかけ、世界自然遺産・知床をはじめとした北海道の沿岸には流氷が接岸しますが、オホーツク海の海氷は年によって多い年と少ない年があります。その変動理由の解明は、地球温暖化の進行に伴う海氷の減少傾向を理解する上でも、流氷観光など社会経済活動への影響を考える上でも、重要な研究課題です。
本学院地球圏科学専攻の三寺史夫教授(低温科学研究所)は、筑波大学生命環境系の植田宏昭教授と共同で、シベリア高気圧、アリューシャン低気圧、太平洋などで構成される「環オホーツク気候システム」の観点から、長期の観測データ(全球大気データや人工衛星データ)に基づき、オホーツク海全域の海氷の発生量が年ごとに変動するメカニズムを解析しました。
その結果、海氷が平年よりも多い年は、アリューシャン低気圧が北太平洋の全域で強まっていることが分かりました。これに伴い、シベリアからの北西風(寒気流)がオホーツク海上で強まり、寒気の蓄積量も多くなっていました。一方、熱帯域との関係に注目すると、海氷が多い年はエルニーニョ的な海水温分布になっており、アリューシャン低気圧の強化とも連動していることが確認されました。これに対し、海氷が少ない年の熱帯域では、ラニーニャ的な海水温分布になっていました。
さらに、海氷が多い年は、海氷の面積が増え始めてから数カ月後に、アリューシャン低気圧が強まることが分かりました。アリューシャン低気圧の強化は、ユーラシア大陸からの寒気の流入を促進します。このため、寒気蓄積→海氷増加→アリューシャン低気圧の強化という連鎖的な季節進行は、海氷の維持につながる正のフィードバック関係にあることが示唆されます。
本研究が示した「環オホーツク気候システム」の観点から海氷の変動機構のメカニズム解明をさらに進めることで、季節予報の精度向上や温暖化予測の理解が深まることが期待されます。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
高緯度と熱帯からの遠隔影響がオホーツク海氷の年々変動を引き起こす~「環オホーツク気候システム」の端緒を開く~(PDF)
本学院地球圏科学専攻の山下洋平准教授(地球環境科学研究院)と、同地球圏科学専攻博士前期課程(研究当時)の森雄太郎氏は、東京大学大気海洋研究所の小川浩史教授と共同で、東太平洋海膨における深海熱水域から熱成炭素である溶存黒色炭素が供給されていることを明らかにしました。
森林火災や化石燃料燃焼に伴い、不完全燃焼産物である煤や炭などの熱成炭素が生成されます。熱成炭素の多くは、環境微生物による分解を受けにくく、土壌や海洋に蓄積されやすいため、地球表層の炭素循環から二酸化炭素を隔離する機能を持つと考えられています。熱成炭素の一部は、水と共に移動可能な形態である溶存黒色炭素に変質し、河川や大気を経由して海洋へと輸送されることが知られています。海洋中では、溶存黒色炭素は太陽光により分解もしくは沈降粒子に吸着され、除去されます。しかし、海洋への溶存黒色炭素の年間の供給量はその除去量よりも小さく、海洋には溶存黒色炭素のミッシングソース(未知の供給源)がある事が指摘されていました。そこで研究グループは、学術研究船白鳳丸により東太平洋を中心とした観測を行い、高温かつ高圧である深海熱水域で生成された溶存黒色炭素が深海に供給されていることを世界で初めて明らかにしました。
海洋に存在する難分解な溶存有機物の総量は大気中の二酸化炭素の総量に匹敵しますが、その起源や生成メカニズムはよく分かっておらず、炭素循環におけるブラックボックスとされています。本研究成果は、難分解な溶存有機物である溶存黒色炭素が深海熱水域から供給されている事を明示しており、炭素循環における溶存有機物の役割を理解する上でも貴重な知見となります。
なお、本研究成果は 2023 年 2 月 11 日(土)公開の Science Advances 誌にオンライン掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
深海温泉を源とする微生物に分解されない有機物~深海熱水から溶存黒色炭素が供給されていることを発見~(PDF)
本学院環境起学専攻の先崎理之助教(地球環境科学研究院)は、ノースカロライナ⼤学グリーンズボロ校の照井 慧助教、北海道⽴総合研究機構の⼘部浩⼀研究主幹、国⽴極地研究所(当時)の⻄沢⽂吾⽒と共同で、⿂のふ化放流は多くの場合で放流対象種を増やす効果はなく、その種を含む⽣物群集を減らすことを明らかにしました。
飼育下で繁殖させた在来種を野外に放す試みは、野外個体群の増強を⽬的として様々な動植物で⾏われています。特に、漁業対象種のふ化放流は、国内外に広く普及しています。⼀⽅、こうした放流では⾃然界には⽣じえない規模の⼤量の稚⿂を放つため、⽣態系のバランスを損ね、放流対象種を含む⿂類群集全体に⻑期的な悪影響を及ぼす可能性があることが懸念されています。
そこで研究チームは、シミュレーションによる理論分析と全道の保護⽔⾯河川における過去 21 年の⿂類群集データによる実証分析を⾏い、放流が河川の⿂類群集に与える影響を検証しました。実証分析で対象とした保護⽔⾯河川には、放流が⾏われていない河川とサクラマスの放流が様々な規模で⾏われている河川が含まれます。これらの分析の結果、放流は種内・種間競争の激化を促すことで、放流対象種の⾃然繁殖を抑制し、さらに他種を排除する作⽤を持つため、⻑期的に⿂類群集全体の種数や密度を低下させることが明らかになりました。本研究結果は、持続可能な⿂類の資源管理や⽣物多様性保全に対する放流の効果は限定的であり、⽣息環境の復元などの別の抜本的対策が求められることを⽰しています。
なお、本研究成果は、2023 年 2 ⽉ 7 ⽇(⽔)公開の Proceedings of the National Academy ofSciences 誌に掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
放流しても⿂は増えない 〜放流は河川の⿂類群集に⻑期的な悪影響をもたらすことを解明〜(PDF)
2021 年にユネスコ世界自然遺産に登録された奄美群島は、その植物相の豊かさや特異性でもよく知られています。今後、世界自然遺産を効果的に管理するためには、植物相の特徴を定量的に評価し、その多様性に影響する要因を明らかにすることが必要です。国立環境研究所、鹿児島大学、北海道大学、琉球大学、九州オープンユニバーシティの研究グループは、奄美群島、沖縄島北部、南九州における計 16 地点の全維管束植物を対象とした植物群落の比較から、奄美群島の植物相の特徴を明らかにしました。本学院からは、生物圏科学専攻の相場慎一郎教授(地球環境科学研究院)が参加しています。具体的には、奄美群島の植物相は、周辺地域と比べると常緑広葉樹やシダ植物が豊富で、熱帯・亜熱帯で多様化している分類群が多くみられるという特徴を持っていました。加えて、草本層は絶滅危惧種・固有種の割合が高く、地域の種多様性を特徴づけるものでした。また、奄美群島の植物相は地史的な要因に加え、気温などの環境要因にも規定されていることが明らかになりました。
本研究は、奄美群島の植物多様性を、草本層を含めて定量的に評価した初めての研究です。そして、今後の世界自然遺産モニタリングの起点データを提供しています。本成果は、2023 年 1 月 11 日付で Wiley から刊行される生態学分野の学術誌『Ecological Research』に掲載されました。また、得られたデータは 2022 年 7 月 19 日付『Ecological Research』に掲載され、公開されています
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
世界自然遺産・奄美群島の多様性は足元から!全維管束植物のモニタリング起点データを提供(PDF)
本研究院の鈴木 仁名誉教授らの研究グループ、並びに元大阪市立大学の原田正史氏、島根自然保護協会の野津 大氏は、島根県隠岐の島町で 2 匹のアズマモグラの捕獲に成功しました。
アズマモグラは地下性のモグラ科哺乳類で、日本列島にのみ生息する固有種です。青森県を北限に、主に東日本に広く生息していますが、かつては日本全国に生息していたとされています。現在、アズマモグラが西日本に生息していない原因は、今から 100 万年以上前、日本列島が朝鮮半島と陸続きであった時代に大陸から移入してきた近縁種であるコウベモグラが西日本に生息地を広げ、アズマモグラを東方に追いやったからではないかと推測されています。現在に至るまで両種は競合関係にあり、その生息域の境界は変化し続けています。通常アズマモグラに比べて体の大きなコウベモグラは優位ですが、土壌の質や地形によってはコウベモグラの侵攻を免れた地域もあり、中国地方や四国、紀伊半島などがアズマモグラの生息する飛び地として西日本に残っています。
2021 年 11 月、島根県隠岐諸島で行われた小型哺乳類の採集調査で体の小さい 2 匹のモグラが捕獲されました。詳細な観察の結果、2 匹はこれまで隠岐諸島に生息が確認されていなかったアズマモグラであると判明しました。本報告はモグラがどのように日本に広まって現在の生息地に収まったかを知るうえで重要な知見となります。また、アズマモグラの生息する未発見の飛び地がまだ存在する可能性も示唆しています。
なお、本研究成果は、日本時間 2023 年 1 月 31 日(火)公開の「哺乳類科学」誌に掲載されました。
詳細については,以下のプレスリリースをご覧ください。
未確認のアズマモグラの生息地を発見~西日本に新たな飛び地があることが判明~(PDF)