嶋津研究室

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②ナノを超えるテクノロジーの開発と夢の界面創造  

 

界面科学とナノテクノロジー

 
 近年、ナノテクノロジーに関する研究が盛んに行われています。私たちは「環境汚染物質の無害化、検出に有効な界面を創造」「クリーンエネルギー創製」のための「ナノテクノロジーの開発」に取り組んでいます。
 「界面構築における究極のナノテクノロジー」は「機能性分子を基板表面に望み通りの配列で並べる技術」です。電極表面の構造規制は自己組織化法によって飛躍的に発展してきました。しかし、この方法を用いても2種類の分子の配列を分子レベルで制御することなどは極めて困難です。
 これまで報告された技術の中で、分子レベルでの配列制御を達成できる(=原子や分子を一つづつ並べることのできる)唯一の方法は、走査型プローブ顕微鏡を用いた固体表面の微細加工技術です。この方法を用いると固体表面に会社のロゴや漢字などの文字までもを描くことができます。この方法はなかなか魅力的です。しかし、私たちは電極界面調製に求められる要因(調製が短時間、実用電極などの非平滑かつ大表面積の基板にも適用可能、機能性有機分子の固定が容易など)を考えると、電極界面調製には化学的手法の方が適していると考えています。
 そのため私たちは電極表面に導入した原子・分子を制御素子として用い、機能性有機分子の配列制御を分子レベルで行う方法を提案しています。  
 
 

原子鋳型を用いたナノライン構造の構築

 
 この研究は1999年に始めました。これまで研究成果として電極表面に2種類のチオール分子(一方が機能性分子)が一列おきに交互に並んだ配列を創造することを、アンダーポテンシャル析出させた鉛原子を制御素子として用いることで成功しています。また、組成コントールも試行錯誤なしに行えます。
 このようにして調製した電極は、単に2種類のチオール分子を混合しただけの溶液から調製した電極(=構造制御が行われていない電極)に比べて、高い電極触媒能を示します。さらにこの手法はAu(111)単結晶電極基板だけでなく多結晶電極基板にも有効であります。そのため実用機能性電極の調製にも応用できます。
 現在、さまざまな原子を構造制御素子として用いることで、列の幅を広げたり、点の配列を創造する研究に取り組んでいます。私達の目的は電極調製などの環境修復技術ですが、これらの研究は分子素子構築のナノテクノロジーとなる可能性も秘めています。
 
 

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分子鋳型を用いたナノドットの構築

 
 この研究は2004年に始めました。現在までにAu電極上に分子鋳型をほぼ隙間無く吸着させ、その後スペーサー分子を隣接鋳型分子の隙間に吸着させることに成功し、その電極界面特性を評価する研究を行ってきました。
 また、鋳型分子内部に金属原子を析出させ、析出挙動を解析する研究も行ってきました。析出挙動の解析には水晶振動子マイクロバランス測定(QCM:Quartz Crystal Microbalance)を用いました。QCM測定の特徴は超微量質量(ナノグラム単位)を測れることです。本研究室では単分子層レベルの質量を繰り返し測定できるシステムを構築することに成功しました。これらのシステムを電極/溶液界面での物質移動評価に適用することで、私たちは高感度QCM測定の分野をリードしてきました。
 他にも鋳型分子修飾電極が高感度なアニオンセンサー機能を有することを見出し、実用化に向けた検討も行ってきました。最近では「鋳型分子を積極的に活用する研究」、「鋳型分子の外層に官能基を導入し更なる機能化を行う研究」も行っています。