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    拠点リーダー

    池田 元美






大学院地球環境科学研究院(当時は地球環境科学研究科)と低温科学研究所は、14年度に21世紀COE拠点形成を開始し、18年度で終了した。生態地球圏システム劇変とは、森林などの陸域生態系と固体、大気、海洋からなる地球圏が相互に作用しあうことによって、地球が自力で回復することを不可能にしてしまうために起こる、100年程度の時間スケールをもつ劇的な変化のことである。

地球システムでは複雑な相互作用が起こる。人間活動は数世紀に渡って森林を破壊してきた。20世紀に入って急速に大量の二酸化炭素を排出し、地球は温暖化している。これらはそれぞれが独立に環境を劣化させるだけではなく、森林が減ると二酸化炭素の吸収量が減り、温暖化を促進する。また温暖化によって降水量に大きな変化が起こると、森林が減るというように、相互に悪影響を及ぼす。全海洋をめぐっているコンベアベルトが弱まって、植物プランクトンのための栄養塩が減ると、生産性が低下して二酸化炭素を吸収しにくくなるので、やはり温暖化を進めてしまう。

このような相互作用を持つ地球システムを理解し、その変化を正確に予測しなければ、二酸化炭素排出の削減量もわからない。本拠点は、さまざまな生態系と地球圏の相互作用を対象にして、北極付近の寒冷域、東南アジアのような熱帯、日本を含む温帯を対比する研究を進めた。森林、山岳、海洋の観測と、地球システムモデルを用いることによって、現象を理解し将来予測を試みた。劇変を回避するために提示された策を自然科学に基づいて客観的に検証する体制を示すことにした。注目する点は「炭素吸収による地球温暖化低減と生物多様性保持の両立」である。

教育という大きな使命では、東・東南・南アジアの若手研究者を地球環境科学の専門家に育て、日本だけでは手におえない地球環境の保全を、国際連携によって進めてきた。本拠点では12名のポストドクター(博士研究員)を公募で採用した。また博士課程学生をプロジェクトによって教育するしくみとして、リサーチアシスタントを1学年あたり10名雇用した。本拠点の研究活動を教育体制に具現化するものが、17年度に開設された「大学院環境科学院」であり、その中でも「環境起学専攻」は分野統合型・目的指向型の教育を進める核である。

本拠点は5年間の活動をまとめ、得られた成果を広く一般に公表するとともに、学生の教育に資するために大学院レベルの教科書を編纂した。地球温暖化、オゾン層破壊、環境修復がそれである。

本拠点の国際貢献として、インドネシアとの拠点大学交流があげられる。また学問領域ごとに進められてきた国際共同研究を陸域対象に分野統合する目的で、全地球陸域プロジェクト(Global Land Project/GLP)のNodal Officeを本学に設置したことも大きな貢献である。

本拠点が中心となって、人文社会科学専門家および工学・農学専門家によびかけ、60年後の地球を見据えた「地球未来学」の構築を提起した。その基本概念は、地球温暖化と生態系保全ばかりでなく、水資源確保、安全な食糧供給、エネルギー資源、心身の健康が脅かされていることである。これらの問題が相互に関係しており、その根底にはグローバル化がある現状を考えると、我々はすべてを最適に解決する方策を見出さねばならない。そのひとつとして、多分野が共同で持続可能な社会をめざすサステイナビリティ学教育研究センターを本学に立ち上げる原動力となった。これまで築いた基盤の上に新たな目標を立て、活動を継続していく所存である。





北海道大学 大学院地球環境科学研究院・低温科学研究所
21世紀COEプログラム「生態地球圏システム劇変の予測と回復」
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