北海道大学大学院 地球環境科学研究院 環境修復分野 
田中俊逸研究室 



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研究内容 |


(1)分析化学に関する研究

 1)電気化学的活性基でラベル化したリガンドを用いるタンパク−リガンド相互作用の電気化学的検出
酵素やレセプターと結合するリガンドを電極活性基で修飾したものは、その電極応答が遊離の時とタンパクと結合した時とで異なる。このことを利用すると、タンパクとリガンドの相互作用を電気化学的に検出することができる。現在までにアビジン−ビオチン、レクチン−糖について検討してきた。最近ではエストロゲンレセプターとエストラジオールの系についても検討し、これを内分泌かく乱物質の電気化学的スクリーニング法として開発することを目指している。
 2)海外汚染調査研究
インドネシアのジャワ島における小規模金精錬活動に伴う水銀汚染や、中国東北部を流れる松花江の化学工場爆発事故による汚染等について、実際に現地に行って、汚染状況の調査を行うとともに、その場所に適した修復法を考えることによって、新たな環境修復法の開発を行う。

(2)環境科学に関する研究

 1)環境汚染物質の環境中での動態に与える腐植物質の影響
枯れ葉などが土の中で変性を受けるなどして生成した天然の高分子電解質が腐植物質である。この物質は金属との錯形成能や酸化還元能を有している。また、界面活性作用もあると言われており、水に難溶な有害有機物質を可溶化する。腐植物質は環境中に広くしかも多量に存在しており、上に示すような化学的性質から汚染物質の環境中での動きや毒性に影響を与えていると考えられる。このような観点から、腐植物質と種々の汚染物質との相互作用について調べている。今までに腐植物質が、6価クロムに対する還元作用を有すること、マンガンと酸素の存在下で3価クロムが6価クロムに還元されるのを抑制する働きがあることを明らかにした。また多環芳香族化合物の1つであるピレンの水への溶解度が腐植物質の存在によって増大すること、この時活性炭や粘土鉱物が与える影響についても考察している。
 2)電気化学的水処理法の開発
環境汚染物質、特に有害有機化合物を分解するには、燃焼法、化学的酸化法、微生物を用いる分解法など多くの方法がある。また最近では、超臨界水や超音波を用いる方法なども報告されている。電極での酸化あるいは還元反応を用いて汚染物質を分解する電気化学的分解法は比較的マイルドな条件で、強力な酸化剤などを使用することなく分解できる方利点を有する。
これまでに白金、あるいは酸化スズ電極を用いて、環境ホルモン物質の1つとして疑われているビスフェノールAやノニルフェノールの分解について検討し、効率よく分解できることが判明した。また、電極素材としてカーボンファイバーを用い、汚染物質を電極で酸化重合して除去する新しい電気化学的水処理法の開発を検討している。>>図
 3)エレクトロカイネティックレメディエーションによる汚染土壌の修復>>詳細
近年、有害物質で汚染された土壌が増大している。特に工場跡地など比較的都市の土壌汚染の場合、汚染によって土地の評価額が低下することはもちろん、汚染土壌の放置による汚染の拡大が心配される。通常このような汚染土壌の処理は、土壌を掘り出して遠くの処理場に運んで処理されるが、繁華街などでは掘り出す行為そのものが、有害物質を撒き散らす恐れがある。土壌を掘り出すことなくその場(原位置:in sitnとも呼ばれる)で処理できる方法が望まれている。エレクトロカイネティックレメディエーション法はそのような原位置処理法の1つであり、汚染土壌の近傍に二本の電極を挿入し、電位を引加することで、汚染物質を除去しようとするものである。電荷を有する汚染物質は電気泳動によって運ばれ、電気的に中性のものでも電位を引加したときに粘土内に発生する電気浸透流によって運ばれる。
我々はこの方法の基礎的検討として、6価クロムの除去の際、腐植物質によって3価に変換して運ぶ方法や、水に難溶な汚染物質については、腐植物質の可溶化能を利用して除去効率を上げる方法について検討している。また、エレクトロカイネティックレメディエーションと植物を用いるファイトレメディエーションの融合による汚染土壌の修復法の開発に着手している。
 4)その他
a)疎水化マグネタイトを用いる有機汚染物質の磁気分離
b)アルギン酸と間伐材由来の炭素素材を組み合わせた吸着剤の開発
c)塩の集積によって汚れた分解遺産の修復



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