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日本産ヒメフナムシ属の系統進化に対する日本列島形成史の影響~DNAは過去からの手紙~(地球環境科学研究院 教授 山本正伸)

2023年8月25日

北海道大学
鳥取大学

ポイント

●ミトコンドリアDNAとゲノムワイド解析を用いて、日本全国のヒメフナムシ属の系統進化を解明。
●ヒメフナムシ属の東西での系統進化の違いは、日本列島の形成史の影響を受けている可能性を示唆。
●ヒメフナムシ属が地域固有の系統進化を示すことを解明し、長い年月同じ地域に留まることを示唆。

概要

北海道大学大学院環境科学院修士課程(研究当時)の張替若菜氏、同大学院地球環境科学研究院の山本正伸教授と鈴木 仁教授(研究当時)、鳥取大学農学部の唐沢重考教授らの研究グループは、全国から採集したヒメフナムシ属のDNAを解析し、日本産ヒメフナムシ属の系統進化が、日本列島における地質学的歴史を反映している可能性を見出しました。

本研究では、生物の遺伝的多様性分布を過去の地質学的変遷から説明づける生物系統地理学の考え方を応用し、現生生物DNAから古環境分布を復元するアプローチを提案しました。そのアプローチの指標生物として本研究において検証されたのが、森林土壌に生息するヒメフナムシ属です。

ミトコンドリアDNA解析の結果から、ヒメフナムシ属系統はフォッサマグナ地域を境として西日本と東日本とで大きく異なるグループを形成する一方、約350~700万年前からは東日本と西日本を行き来する系統が一部に現れることが判明しました。東西の行き来が始まった時期は、陸地の大半が海面下にあった東日本が隆起し始めた時期と一致しています。集団遺伝学的解析からは、第四紀の氷期-間氷期サイクルに合わせたヒメフナムシ属の集団サイズ変動が示され、ヒメフナムシ属が気候変動に敏感であることが示唆されました。さらに、ゲノムワイド解析により、ヒメフナムシ属の分布地域固有の核DNA進化が明らかになり、ヒメフナムシ属が長い年月の間ひとつの地域に留まる可能性が提示されました。これらの結果は現生生物DNAからの古環境分布の復元における、ヒメフナムシ属の指標生物としての妥当性を示唆しています。

なお、本研究成果は202387日(月)にBMC Ecology and Evolution誌にオンライン公開されました。

論文名:History of the terrestrial isopod genus Ligidium in Japan based on phylogeographic analysis(系統地理学的解析に基づく日本産陸生等脚目ヒメフナムシ属の歴史)
URL:https://doi.org/10.1186/s12862-023-02144-8

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日本産ヒメフナムシ属の系統進化と日本列島の形成。
ヒメフナムシ属の系統進化は日本列島形成の歴史に影響を受けている可能性がある。