Graduate School of Env.Science / Faculty of Env.Earth Science
Hokkaido University
N10W5 Sapporo
Hokkaido 060-0810
Contact/Counsel
Admission Guide
Contents
被災者または 事故発見者 |
時間内 | 119番 研究科会計掛:2206 |
時間外 | 119番 研究科守衛:728-4715 |
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時間内 | 保険管理センター: 2029 / 3692 北大病院受け付け: 5640 〜5642 119番
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時間外 | 119番
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本研究科は、一般的な実験室で通常、行われているような化学的な分析を始め、特殊な化学合成実験・高温条件や低温条件、あるいは高圧条件や近真空条件のもとで実施される化学反応や物理学的研究・マウス、ラット、ショウジョウバエなどの小動物の飼育研究・植物栽培を利用した研究・さらには、高山や崖崩れなどが予想される地域を含むフィールドでの調査研究と試料採取・河川、湖沼、海洋での船舶を利用した研究・それらの地域での潜水作業を必要とする研究などを研究対象としている。正に、ミクロの世界からマクロな世界までが研究対象であり、また、それぞれの分野では特殊な研究手法が利用されており、それらの研究実施上の安全対策は、一人一人が常に安全の向上を心がけることこそ、最も重要な事故防止策である。また、人間は常に安易な方向に流れやすいことを自覚して、必要十分な注意を払うべきである。公式に報告されなかった小さな事故が何の反省や対策もない状態で放置された場合には、将来的には大きな事故や死亡事故に至る可能性が高い。北大においても、平成4年以降の数年間に、酸欠事故による死亡・コンセントの差込部への埃の集積による火災発生・有機溶媒による火災発生・潜水作業中の死亡災害事故などが報告されている。
日本は世界で最も安全な国の一つといわれているが、この研究科の通路を歩いていても床面が濡れている場合には滑って転倒し、運が悪い場合には骨折したり、あるいは、わずかな段差でつまずいたり、思いがけないところに突起物があって、衝突してけがすることもある。従って、多くの危険が身の回りに存在している。事故が発生してからでは遅すぎるのだ。どのような危険因子が身の回りに存在するのかを作業に先立ち、詳細に検討し、また、作業内容の危険度を常に点検することが必要である。次ページの事故につながる危険因子群の存在を検討してみて下さい。
教育研究の機能を十分に果たすためには、それなりの環境を整備することが必要であるが、その最優先の課題は安全性の高い環境づくりである。このような安全な環境は、その現場にいる人々が安全性を確保しようとする意識と努力から形成されるものである。
本研究科は名称が示すように、地球のあらゆる地域の環境が研究の対象となっている。国の内外を問わず、海洋・海岸地帯・平野・河川・湖沼・山地などを含む多種多様な地形の地域での調査・研究活動がその前提であり、わずかな不注意から取り返しのつかない事故を招くことがある。気象条件や地形の険しい地域ほどそのような危険性は増すが、比較的に安全と予測されている平地においても、地域特有の風土病や有毒生物の存在があり、思わぬところに大きな危険性が待ち受けている。
さらに、海外における研究・調査活動は、自然災害に加えて、治安の悪さなどの人為的な危険性があり、研究・調査活動の準備段階から、そのような情報を収集するなどの細心の注意が必要である。また、このような研究活動に慣れていない院生及び研究生は、経験不足から来る急激な体力消耗、慣れない食事や飲料水に対する適応不足などにより、体調不良となり、事故発生につながる危険性が常に潜んでいる。従って、現地作業期間中の健康管理には、常に心掛けなければならない。
本研究科の教官は野外研究において多くの実績を挙げており、また、経験も豊かである。しかし、研究内容や研究対象は、常に、進化し、変化しており、また、研究の対象とする環境を取り巻く状況も、時々刻々と変化している。従って、手馴れた研究地域で行う研究でも、馴れの気持ちが油断となり、大きな事故の発生につながりかねないことに留意すべきである。
このマニュアルは、フィールド研究において事故や災害に遭遇しないための心構え、基本的な安全確保と準備、及び、事故発生時の対応のみに限定した。その理由は、本研究科の研究者・院生諸君が活動する地域のすべてをカバーするような安全指針を作成することは不可能に近いためである。従って、研究活動の対象となる地域に関する詳細な情報や危険性の高い地域での研究活動に関する安全マニュアルは、公開されている安全マニュアルなどを参考にすること。これらのマニュアルには、渡航情報・情報ソース・健康管理情報などを含むホームページへのアクセスが示されており、海外で発生しているマラリアなどの風土病に関する情報が得られる。また、外務省関係のホームページには、渡航関連情報として、海外医療情報・海外危険情報などが公開されている。さらに、在外公館は自国における治安問題や危険地域の指定などの情報を有しており、在外公館によってはインターネット上で公開している場合がある。
海外などでフィールド研究を行う研究者・院生諸君は自らの責任で、それらの最新情報を入手し、事故に巻き込まれないように十分な注意をすべきである。なお、安全マニュアルに関する参考資料・市販されている参考書などを本研究科図書室の「安全管理マニュアル・コーナー」に置いてあるので、是非、参考にしていただきたい。
フィールドにおける調査や研究には、学内の場合と異なる各種の危険に出会うことが多いので、特別な注意が必要である。フィールドに出かける場合には、国内・国外を問わず現地の状況を把握し、調査目的に適した服装で出かけること。また、気象状況、積雪状況、日照時間、潮の干満などを予め調査しておくこと。
( 1) 予め、実際の行動計画を綿密に作成すること。
( 2) 現地への移動における交通事故や現地での突発的な事故に遭遇するなどの危険性が絶えずつきまとうので、健康保険証を携帯し、また、障害保険・生命保険などに必ず加入しておくことが肝心である。
(3)フィールドワークで発生している事故の多くは交通事故である。無理のない計画を立て、寝不足の状態で車を運転することがないようにすること。また、慣れない土地での車の運転には特に注意すること。北海道の郊外の道路は対向車の数が少なく、自然に、速度超過になりがちであるが、速度超過は交通事故に直結するため、速度超過などの違反行為は行わないこと。交通事故が発生した場合には、迅速に警察に届け出ること。
(4)私有地に立ち入るときは、必ず、所有者の許可を得ること。
(5)現地調査では、危険な場所に立ち入ったり、危険性のある行動を余儀なくされることがあるので、特段の注意が必要となる。また、状況に応じて、ヘルメットなどの保安具を着用すること。
(6)人に危害を与える恐れのある動物・昆虫・植物など(クマ・毒蛇・ハチ・毒蛾・ウルシなど)の習性や多発地域を熟知しておき、また、事故に遭遇した場合の対応までを予め検討しておくこと。さらに、緊急時に、救急車の手配が困難な場合や、近くに連絡先がない場合を考え、一応の救急処置を習得するとともに、応急処置に必要な最低限の装備を携行すること。
(7)野外活動にあたっては、定期的に、ラジオなどの気象状況を把握し、気象の急激な変化に注意すること。一夜にして増水し、中洲などに取り残されたり、また、降雨がなかった下流地域が上流地域の降雨により一夜の内に大洪水に見舞われる場合もあり、野外活動地域の気象状況の把握は極めて大切である。
(8)危険性の高い場所や夜間の調査での単独活動は事故発生時の対応が困難であり、極めて危険であるので、そのような形の単独行動は避けるべきである。しかし、やむを得ず単独行動を行う場合には、必ず、事前に届け出ること、また、携帯電話やトランシーバーなどを利用して、常時、連絡が確保できるようにすること。
(9)安全性が確認された飲料水が確保できない地域でのフィールド研究の場合には、活動日程を考慮して、十分な量の飲料水を出発前に準備し、携行すること。
(10)野外活動では、できるだけ肌を露出させずに、また、いばらなどの棘による傷、虫による刺し傷を防ぎ、活動しやすい服装の着用が望ましい。履き物は、切り株やガラス片による突き破りが起きないような底の丈夫な靴で、かつ、滑りにくい構造の靴が望ましい。また、川に転落した場合に備え、肩紐が容易にはずせる構造のリュックサックが望ましい。
(11)膝より深い沢に入る場合には、細心の注意が必要である。苔や水垢の着いた石は、特に、滑りやすいので、注意すること。また、澄んだ渓流は見掛け以上に深く、急に深さが変化することもあるので、注 意すること。天候の悪い日に、渓流沿いの研究調査は避けること。また、現地が晴天でも、水の濁りが急に増した場合には、上流域での増水(豪雨)が予測されるため、調査を中断すること。
(12)国内では、万が一、遭難した場合でも、パニック状態に陥らずに、冷静に判断して行動すること。多くの場合、骨折などのけががなく、また、天候が好転すれば、約3日で人家などへ到達可能である。しかし、雨天の場合や夜間は、夏場でも気温が下がり、体温の低下を来たし、死に至るケースもあるので、服装や装備に十分な配慮をすること。
海外での野外調査・研究を行う場合、国内の野外調査・研究における注意事項に加え、海外での活動に固有な安全対策・健康上の注意などを留意することが必要となる。
国内・国外において危険を伴う野外研究を実施する場合には、通常の出張申請書の他に、次の書類を提出すること。
(1) 調査計画書(同行者の氏名・旅程表を含む)。特に、山岳地域の場合には、登山計画書。
(2) 海外旅行保険のコピー。特に、山岳地域の場合には、山岳遭難保険のコピー。
不測の災害・事故に遭遇した場合に、関係者が適切な対応がとれるような次の項目を含むこと。
(1) 調査目的、(2) 同行する者の所属と氏名、及び(3) 行動計画と連絡網
災害・事故が発生すると治療・救助などに多大な経費が必要となる。海外における調査・山岳地域などの危険地帯での野外研究実施にあたっては、さまざまな災害・事故を想定して、必ず、適切な保険に加入しておくことが必要である。院生を同行する場合には、院生が保険に加入していることを確認すること。保険には次のような種類がある。(1)海外旅行保険:出国から帰国までの全期間に渡り加入期間を設定すること。保険の対象は障害・疾病・携行品・賠償費用・救援者費用に分かれている。(2)山岳遭難保険:一般障害保険に登山や登はんを特別に加えた保険である。損害保険会社が引き受け会社となる場合には、担保行為は国内と海外にわかれており、さらに、行為の内容によっても保険料が異なる。支払いの対象は死亡・後遺症一時金、捜索救援金、入院費用、賠償責任である。その他に、日本山岳会による山岳遭難共済制度がある。(3)学生教育研究災害障害保険:本研究科の院生は全員加入する建前となっているが、事前に確認しておくことが望ましい。
《保険に関する情報入手》山岳遭難共済制度:日本山岳協会事務局共済掛(電話:03-3481-2396)
三井海上火災保険:取扱代理店ミック(電話:090-8635-7260)
野外調査において、特に、救援活動に時間を必要とする、あるいは、付近に適当な医療施設がない地域を予定している場合には、風邪・下痢・軽い怪我などで体調を崩すと、大きな事故の引き金となる恐れがあり、健康管理は特に重要である。そのためには、初期の内に対処できるように、必要な医薬品を携行すること。また、体調が不調の場合には、無理な行動を取らないことが野外研究の鉄則である。
黄熱病・コレラ・マラリア。肝炎などの汚染地域に立ち入る場合には、必ず、予防接種を済ませるか、あるいは予防薬を携行し、適宜、服用する。アフリカ諸国のように、黄熱病の予防接種証明書がなければビザの発給を受けられない場合があるので、予めそれらの情報を入手しておくこと。
国内でも、怪我が原因で破傷風に罹患する場合があるので、予防接種を受けておくことが望ましい。
コレラ・黄熱病・ペストなどの感染汚染地区をもつ国に関する最新の情報は厚生省ホームページ(HP)(http://www.Mhw.go.jp/topics/kaigai/JP/topics/Infected.html)で一覧できる。その他の感染症の最新情報は外務省HP(http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/iryo/index.html)で、世界各地の発症情報を提供している。また、WHOの日本語HP(http://malaria.himeji-du.ac.jp/Ipublic/ITH/index.html)には、マラリアに関する情報が豊富である。
札幌市内の各保険所・小樽及び函館の検疫所(小樽:? 0134-22-5234;函館:? 0138-41-5108)に問い合わせると、予防接種の内容と予防接種を受けられる病院を紹介してくれる。また、労働福祉事業団海外勤務健康管理センターのHP(http://idsc.nih.go.jp/index-j.html)では、各種の感染症について詳しく説明し、その予防対策法を示している。
必要となる医薬品は対象とする地域により多少異なるが、一般的には、次のような医薬品の携行が望まれる。携行医薬品:外傷用消毒薬・かぜ薬・胃腸薬・抗生物質入り軟膏・服用抗生物質・抗マラリア剤・防虫薬・毒蛇用解毒剤・湿布薬・小医療器材など。なお、アレルギー体質などにより、医薬品に対する適性は個人差があるので、各人の責任で適切な医薬品を選択すること。
研究対象地域が政治的に不安定であったり、治安が悪化している場合には、テロ活動に巻き込まれたり、略奪・強奪に遭遇する可能性がある。物品や金銭の盗難ばかりでなく、大怪我をしたり、下手をすると生命までも落としかねない。この種の被害に遭遇しないために、研究対象地域の安全性を予め確認しておくことが必須である。
世界の政治情勢は刻々と変化している。危険地域も日々の政治情勢で大きく変化しているため、外務省の海外危険地情報一覧のHP (http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/joho/index-n.html)を利用して、そのような情報が詳細に確認すること。特に、外務省が危険度3「渡航延期勧告」(平成12年3月13日現在、36件)以上の危険度に指定した国への渡航は見合わせること。外務省海外安全相談センター (03-3581-3749では、電話による問合わせに応じてくれる。
外務省では、在外公館がある国々のリストをHP (http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/kiko/list/index.html)に掲載しているので、緊急時の連絡方法を確保しておくこと。また、主要な在外公館は独自にHP (http://www.mofa.go.jp/mofaj/link/kokan/index.html)を利用して、情報を提供している。さらに、海外協力事業団(JICA) (HP: http://www.jica.go.jp/branch/Index.html)は、世界各地に事務所を開設しており、いざという場合に連絡可能である。
治安が極端に悪化すると、通常の電話回線による連絡は不能となる可能性が高くなる。衛星通信システム(例えば、インマルサット: http://www.everest.co.jp/wec/sales/inmar/inmar%20rent.htm)を利用して、独自の連絡方法を確保することが可能である。
山岳地域での安全確保の基本は、第一に、経験(自ら経験を積み重ねるか、あるいは、経験者に同行する)、第二に、自然条件の把握(特に、気象条件を的確に把握する)、第三に、健康(過労は災害・事故の引き金になる)である。山岳地域での主な自然災害には次のようなものがある。
(1)天候による災害:雨・風・寒気・雷など。また、冬期では、吹雪・深雪・雪崩など。
(2)斜面での災害:落石・雪崩・滑落など。
(3)渓流での災害:増水(鉄砲水)・急な深み・滝壺など。
(4)動物による災害:スズメバチ・ツツガムシ・マムシ・ハブ・クマなど。
それぞれの災害に対する対処方法は市販されている登山関係の本を参考にして、十分な知識を身に付けておくこと。また、現地では常に注意を払い、慎重な行動がそのような災害を防止する最も有効な対策である。
このような自然条件が厳しい中での行動は、心身に大きな影響を及ぼし、次のような疲労やさまざまの障害があらわれる。
河川・湖沼での野外調査・研究においては、船舶の転覆・船舶からの転落事故・潜水具の故障からくる事故・ロープなどのからまり事故に由来する溺死、また、急激な温度変化に伴う心臓麻痺による事故などが発生しやすい。このため、次のような注意が必要である。
各種の感染症に罹患する恐れは世界の全域にあるが、東南アジア・南アジア・西アジア・アフリカ・中南アメリカなどの地域には、各種の感染症原因生物や有害動物が特に多い。予め、それらに関する情報を収集することは当然であるが、現地での活動においては次のような注意が必要である。
日本人はすべて金持ちと誤解され、ひったくりや強盗の対象となる確率が高い。また、現地の言葉が分からない・話せないために、誤解を招き、被害を受けるケースも多い。このような被害を受けないために、次のような注意が必要である。
溺れたり、心臓麻痺で呼吸あるいは心拍の停止が認められる場合には、分秒をあらそう緊急の蘇生処置が必要となるが、その処置法は状況に応じて適切なものでなければならない。また、怪我・打撲などによる出血を止める応急処置に関する知識などが事故発生時には必要となる。このような応急手当の手引き書は防災協会・医療機関から各種、出版されている。それらを熟読し、正しい応急手当を身につけ、多種多様な場面で、適切な対応がとれるよう心掛けることが必要である。国内の消防士や救急救命士団体のHP (http://wwwl.odn.ne.jp/~cam16380/)で、救急法が解説されているので参考にするとよい。
現地で事故に遭遇した場合には、必要に応じて現地の救急医療機関・救援組織などに連絡を取るとともに、本研究科に直ちに連絡を入れ、その状況・対応を報告すること。また、保険会社へ連絡し、救援態勢についての相談を行うこと。
連絡先:本研究科総務掛(直通電話)+81-(0)11-706-2202(昼) , +81-(0)11-728-4715(夜間)
研究科ファックス +81-(0)11-706-4867
研究科 E-mail somu@ees.hokudai.ac.jp
事故の規模が大きく、2次災害の恐れが高い場合には、経験者の意見を尊重し、慎重に救援活動に入ること。また、外部からの救援が必要な場合には、現地の救援組織に出動を要請して、その救助活動に協力して救援にあたること。
帰国後、あるいは、研究科に戻った時点で、事故発生の状況・対処・経過・事後処理などの内容をまとめて、研究科長に提出すること。
<参考資料>
笠倉嗣仁、2000:現地危険情報3 東南アジア・韓国・インド編.笠倉出版社
敷島悦郎、1996:海外登山とトレッキング.山と渓谷社
北田紘一、1998:山のトラブル対処法.山と渓谷社
東京消防庁救急部救急業務懇談会専門委員会監修、1998:応急手当の手引き.東京防災指導協会
飯田睦次郎・桜井博幸、1998:すぐ役立つ山の気象と救急法.東京新聞出版局
北海道大学安全委員会編集発行、1999:安全の手引き
海洋における観測は、常に、危険と隣り合わせである。すなわち、陸上の研究施設と異なり、船舶は常に動揺しているため、船舶上の作業者は身体のバランス保持に気を使い過ぎ、周囲の状況変化に対応できないような場合もあり、また、程度の差はあるものの、船酔いで判断力がかなり鈍っている。加えて、船舶に特有な構造物の存在や限られた面積を利用して運行用及び観測用の各種機器類が所狭しと置かれているため、陸上の研究施設の場合よりも、事故がはるかに発生しやすい環境状況にある。このような厳しい環境下で、安全を確保しながら作業を行うため、数多くの遵守すべき注意事項が必要となる。研究船や練習船の特徴に合わせて、観測作業や船内生活などに関する手引き書が用意されているので、乗船の前に必ず熟読すること。以下に、船舶内における生活と活動に関する一般的な注意事項を述べる。
中型及び大型の船舶を利用した海洋観測は、一般的に、長期間に渡ることが多い。その間、かなり狭い生活圏での共同生活や共同作業を余儀なくされる状況にあり、また、危険な機器類が所狭しと配置されている状況であり、そのような厳しい環境下では、以下のような特殊性があり、注意が必要である。
船舶の構造: 海水侵入などの不測の事態に備えるため、通路の扉の多くは水密扉で、出入口が狭く、かつ、段差がある。甲板は傾斜しており、外周には柵が設けられているが、作業によっては取り外されている こともある。また、各種機器類の突起部が各所に存在しており、特に、高電圧の負荷されている無線用機器類が設置されている特殊な環境である。
生活環境: 波浪による船舶の動揺は不可避である。また、狭い生活範囲に多数の人々が寝起きし、多くの船舶は24時間運行のため、3交代制を採用しており、常時、誰かが睡眠をとっている。最近では、船内で雑用水がつくられるようになってきたが、一般に、船舶に積込まれた飲料水は限られている。食事時 間は決められている。
船上作業: 目的により作業内容が異なるが、各種の観測機材をワイヤーロープに取り付け、ウィンチでそれらの観測機材を海水中に降ろし、引き上げる作業を行う。海洋に係留する場合には、ロープなどで観 測機材を連結し、海洋に投棄し、適宜、回収するなどの作業を行う。また、海洋生物の調査では、各種の網や漁網を利用した作業を行う。着岸時には、船舶係留のロープなどが甲板上を交差する状態となるの で危険である。
上記で触れたように、船舶内での生活や活動は、陸上の生活環境と大幅に異なるため、次のような注意が必要となる。
転落事故は可能な限り、避けなければならないが、仮に、そのような事故が発生した場合には、慌てずに、体力の消耗を避けるようにして、救助を待つこと。軽装で、救命胴衣を着用している人が、10℃の海水に、静かに浮いた状態での生存維持時間(パニックを起こさず、正常な状態を保持可能な時間)は約2.7時間であるとされている。
船舶からの退避を必要とする船舶事故時の諸注意は出港時に行われており、実際の退避に当たっては、その注意に従い、また、船舶士官などの誘導に従い、退避などの行動を速やかに取ること。
小型船舶を利用する場合、気軽に港と観測地点を往復できるため、より簡便であり、安易な計画で観測の実行が可能であるという意識に陥りがちである。しかし、小型船舶は大型船舶よりも波浪の影響を受けやすく、常に、転落事故の危険性が高い。このような高い危険性を強く認識して、完全な準備を整えることが必要であり、大型船舶利用での注意事項に準じた準備が必要である。
海岸線付近での観測や作業における注意事項は、陸上で行われる観測や作業における注意事項とほとんど同じである。しかし、足や下半身が波浪や海藻などにより掬われたり、急な深みにはまるなどの危険性が常に存在している。そのため、動きの取れる衣服を着用し、救命胴衣の着用が不可欠である。また、海岸線に近い区域には、ウニ・貝などの殻や、放置されたビン・カンなどが散乱していることがあり、素足での作業は極めて危険であり、適切な手袋・靴を着用すること。
人事院規則第10条4項の規定によれば、海中での潜水作業は、資格を有する者のみに許されている。従って、このような潜水作業を行う場合には、資格を有する人々の協力の元で実施されるべきである。潜水にあたっては、ボンベなどの潜水器具などの取り扱い、水圧変化に伴う障害などについて研修を受け、熟知すること。また、不測の事故が発生する危険性が常にあるので、単独での作業を避け、また、健康管理には十分な注意を払うことが必要である。特に、潜水作業などの危険度の高い作業を指揮することが予定されている研究従事者は、研究計画申請前に健康診断を受診し、心臓発作などの突発性病症を起こす危険因子を抱えていないことを確認することが必要である。また、作業現場が離れており、長期の滞在を必要とする場合には、滞在期間の体調管理に十分に注意し、体調不良と思われる場合には、作業参加を取りやめるなどの配慮が必要である。
不用意な実験ほど、危険なものはない。小さな実験でも油断をしてはならない。爆発事故などを含む事故のショックは、当事者の物的及び肉体的な損害に止まらず、精神的な面に与える影響は大きい。当事者自身を傷つけ、また、他人まで巻き込む事態を予測すれば、細心の注意を払い、正しいやり方で実験を行わなければならない。研究及び技術の高度化や学際的な拡大によって、専門分野の如何を問わず、化学薬品類の使用が日常的に行われている。それらの薬品類の大半は、潜在的に危険であるが、その性質と危険性の程度を把握することで、それらの化学薬品類を安全に、適切に、また、有効に利用可能となる。
それらの化学薬品類は危険の性質により分類されており、また、その取り扱いは消防法・毒物及び劇物取締法・労働安全衛生法・人事院規則などによって規制されている(表1)。さらに、毒物及び劇物の保管・管理については本研究科の内規によって定められている。これらの法規・規則・内規に準じて使用すること。
発火性物質 | (アルキルアルミニウム、黄リン、還元金属触媒など) | 消防法第1類 |
禁水性物質 | (金属ナトリウム、水素化カルシウムなど) | 消防法第3類 |
可燃性ガス | (水素ガス、酸素ガス、メタンガス、プロパンガスなど) | 高圧ガス取締法 |
引火性物質 | 特殊引火性液体(エーテル、ジメチルシラン、二硫化炭素など) | 消防法 |
高度引火性液体(アセトアルデヒド、アセトン、ガソリン、酢酸エステルなど) | 消防法第4類 | |
可燃性物質 | 無水酢酸、アセトン、アセトニトリル、塩化アセチル、アクリル酸、アクリロニトリル、アニソール、コリジン、コロジオン、ベンズアルデヒド、ベンセン、塩化ベンジル、ベンジルアミン、ブロモベンゼン、エタノール、酢酸エチルなど | 消防法 |
爆発性物質 | 爆発性化合物(過塩素酸アンモニウム、ピクリン酸、トリニトロトルエンなど) | 火薬取締法 |
爆発性混合物 | 消防法第5類 | |
酸化性物質 | 酸化性固体(過塩素酸アンモニウム、無機過酸化物、過マンガン酸塩など) | 消防法第1類 |
酸化性液体(過塩素酸塩、過酸化水素、発煙硝酸など) | 消防法第6類 | |
酸化性ガス(酸素、オゾン、フッ素、塩素など) | 高圧ガス取締法 | |
強酸性物質 | (硫酸、硝酸、クロロ硫酸、フッ化水素、トリクロロ酢酸、ギ酸など) | 消防法 |
有毒ガス | (塩素、フッ素、硫化水素、シアン化水素など) | 高圧ガス取締法 |
毒物 | ヒ素、アジ化ナトリウム、無水亜ヒ酸、黄燐、シアン化水素、シアン化ナトリウム、ニコチン、水銀、セレン、フッ化水素、エンドリン、硫化燐、メチルパラチオンなど | 毒物・劇物取締法 |
有害性物質 | 劇物(アクリルニトリル、アニリン、アンモニア水、ダイアジン、エピクロロヒドリン、塩化水素、塩化第1水銀、カリウム、過酸化水素、クロロエチル、クロロメチル、クロロホルム、 クロロスルホン酸、四塩化炭素、臭素、発煙硫酸、無水クロム酸、シュウ酸、硝酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、クレゾール、硫酸ジメチル、硫酸、トリクロロ酢酸、ナトリウム、ニトロベンゼン、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノール、ヨウ素など) | 毒物・劇物取締法 |
次のような物質は動物実験から、発がん性と発症部位が確認されている。ヒ素化合物、皮膚・肝臓・肺;アスベスト、肺・消化器;ベンゼン、造血組織;ベンチジン、膀胱;塩化ビニル、肝臓・肺。従って、これらの物質の取り扱いは換気の良好なドラフト内で行うべきである。すでに、製造が禁止されている物質もある。
表2 無機性及び有機性毒物の毒性と対処法
ヒ素 |
毒性?亜ヒ酸は特に猛毒。致死量0.1-0.2gで、嘔吐・下痢・腹痛などの後に、昏睡して呼吸困難に陥り、心臓麻痺により死亡。注意?実験室での取扱いは極力避け、不可避の場合には細心の注意を払うこと。 処置法?吐かせてから牛乳を500 ml程度飲ませ、2-4 lの温水で胃を洗浄する。 |
水銀とその化合物 | 毒性?水銀の蒸気は毒性を示し、呼吸器を損傷する。また、塩化水銀(?)は特に猛毒で消化器などを損傷して、死に至る。 注意?密封した容器に保存すること。 処置法? スキムミルク、水などでといた卵白を与える。BAL、硫酸ナトリウムの水溶液を与える。 |
リン、リン化合物 |
毒性? 黄リンは特に火傷の原因となる。三塩化リンも同じである。また、その蒸気は鼻や喉の粘膜を刺激し、腐食作用を示す。消化器に入ると激しく作用して数日後に、死に至る。 |
強酸性(特に硫酸)、強アルカリ類 |
毒性? 触れると皮膚をおかし、重い化学的火傷や腐食を引き起こす。また、衣服などを腐食する。注意? 実験台の端や転倒しやすい所に置かないこと。処置法 ?(強酸)万一、飲み込んだ場合には、200mlの酸化マグネシウム乳濁液、水酸化アルミニウムのゲル、牛乳、水などを飲ませて希釈する。皮膚に付着した場合には、相当時間、水洗し、その後、希アルカリ、石鹸などで中和する。目に入った場合には、15分以上流水で洗い流し、早期に、医師の診断を受けること。(強アルカリ)飲み込んだ場合には、薄めた食用酢(約5倍希釈)を飲ませ、中和をはかる。皮膚に付着した場合には、ヌルヌルしなくなるまで流水で洗い、さらに、薄めた食用酢で中和する。目に入った場合には、15分以上流水で洗い、早期に、医師の診断を受けること。 |
アニリン・ニトロベンゼン |
毒性? 皮膚からの吸収や蒸気の吸入により、頭痛・吐き気などを起こし、ときには意識不明となる。注意? 芳香族アミン系化合物には強力な発がん性を示すものがある。ドラフト内で操作すること。処置法? 飲み込んだ場合には、吐かせた後に胃を洗浄し、下剤を利用して排泄を促進する。皮膚に付着した場合には、石鹸・水などで十分に洗い落とすこと。 |
フェノール類・ニトリル類 |
毒性? 皮膚の腐食性が強く、粘膜から吸収され、神経をおかす。消化器の障害・神経異常の原因となる。注意 ?特に、液体及び気体のニトリルに注意すること。処置法? 飲み込んだ場合には、水・牛乳・活性炭懸濁液を飲ませ、吐かせる。その後、胃を洗浄する。さらに、下剤(ヒマシ油・硫酸ナトリウム)を利用して、排出をはかる。皮膚に付着した場合には、アルコールでこすり落とし、温水で十分に洗浄すること。 |
メチルアルコール: |
毒性? 1回に30-50mlを飲むと、嘔吐・けいれん・呼吸困難・視覚障害を引き起こす。さらに、呼吸麻痺で死に至る。また、失明することがある。処置法? 1-2%重ソウ(炭酸水素ナトリウム)水溶液で胃を十分に洗浄すること。 |
ベンゼン |
毒性? 蒸気を吸入すると中毒を引き起こす。慢性中毒では貧血を、急性中毒では神経錯乱を引き起こす。注意?極めて有毒で、発がん性が報告されている。処置法? 新鮮な空気のある所に移す。大量に飲んだ場合以外は、胃の洗浄や吐剤の使用は、副次的な害があるので避けること。 |
二硫化炭素 |
毒性? 蒸気を吸入すると神経系障害が起こる。処置法? 飲み込んだ場合には、胃を洗浄するか、吐剤を与えて吐かせる。その後、保温し、換気のよい所で休ませる。 |
ジメチル硫酸 |
毒性? 皮膚・粘膜の炎症・壊死及び致死的な肺の障害を引き起こす。注意 ?無色・無臭であり、気付かないことがある。皮膚からの吸収が異常に速いので、十分な注意が必要である。 |
表3.薬品中毒に対する応急処置
処置 | |
薬品を飲み込んだ場合 | (1)専門医に連絡する。
(2)吐かせる(酸やアルカリのような侵食性の薬品や炭化水素系の液体を飲み込んだ時には、吐かせないこと) (3)牛乳・溶き卵・水・お茶、あるいは、小麦粉・デンプンなどの水懸濁液を飲ませる。飲んだ薬品の種類に応じて次の処置をとる。例えば、強酸:酸化マグネシウム・水酸化アルミニウム・牛乳などの水懸濁液を飲ませる; 強アルカリ:1?2%酢酸・レモンジュースを飲ませる; 水銀:水またはスキムミルクでといた卵白を飲ませる; 硝酸銀:食塩水を飲ませる; メタノール:1?2%炭酸水素アンモニウムで胃を洗浄する。 |
ガスを吸入した場合 |
新鮮な空気の所へ連れ出す。安静にし、保温する。場合によっては、人工呼吸を行う。また、吸入したガスの種類に応じて次の処置を行う。例えば、 シアンガス:直ちに亜硝酸アミルをかがせる; 臭素ガス:アルコールをかがせる; ホスゲンガス:薄いアンモニア水をかがせる; アンモニアガス:酸素吸入を行う。 |
薬品が目に入った場合 |
直ちに流水で 15分間洗浄する。 |
薬品が皮膚に付着した場合 |
フェノールやリンの場合を除き、大量の水で皮膚を十分に洗う。次のような薬品が付着した場合には、その種類に応じて処置を行う。例えば、 強酸:水洗後、飽和炭酸水素アンモニウム水で洗う。 強アルカリ:十分に水洗した後、2%酢酸で洗う。 フェノール:アルコールでこすり落とした後、石けんを使って水で十分に洗う。 リン:水を使わないで、1%硫酸銅水溶液で十分に処理した後、洗い流す。 |
表4.特殊胃洗浄液
毒物 | 洗浄液 |
アルカロイド |
0.02% 過マンガン酸カリウム溶液 |
漂白剤(次亜塩素酸) |
5% チオ硫酸ナトリウム水溶液 |
銅 |
1% フェロシアン化カリウム水溶液 |
鉄 |
100 mL の10%炭酸水素ナトリウム含有生理食塩水に5-10 g のデフェロキサミン加えた溶液 |
フッ化物 |
5% 乳酸または炭酸カルシウム水溶液・牛乳 |
ヨウ素 |
デンプン溶液 |
フェノール・クレゾール |
植物油(鉱油ではない) |
リン |
1% 硫酸銅水溶液(100 mL程度)、必ず、排出のこと |
サリチル酸 |
10% 炭酸水素ナトリウム水溶液 |
その他 |
いずれの場合でも、活性炭水懸濁液や温水の使用可能である |
表5.爆発性混合物(薬品A+薬品B)
薬品A | 薬品B |
硝酸塩・濃硝酸・無水クロム酸・過マンガン酸塩・ハロゲン酸塩(塩素酸塩・亜塩素酸塩・次亜塩素酸塩) | 有機物などの可燃物 |
アルミニウム・マグネシウム | 含酸素化合物(Fe2O3・Na2SO4・Na2CO3・ZnO) |
四塩化炭素・クロロホルム |
金属ナトリウム |
過マンガン酸塩・ハロゲン酸塩・(塩素酸塩・過塩素酸塩・亜塩素酸塩・次亜塩素酸塩) |
強酸 |
不安定なアンモニウム塩(亜硝酸塩・塩素酸塩・過マンガン酸塩) |
安定なアンモニウム塩 |
濃硫酸・発煙硫酸・クロロ硫酸 |
水・アルカリ |
実験室から出る廃液は、重金属や有機溶剤などの有害物質を含むため、法律で規制されている。また、それらの実験廃液の組成は複雑で、多様であり、さらに、危険な物質を含むことが多いので、その取扱いには十分な注意が必要である。本学では、環境保全センターで廃液処理を一括して行うシステムを採用している。センターが指定する分類に従い、指定された廃液容器に貯留しておき、指定された収集日に定められた場所に搬出することになっている。廃液を出す人が廃液の性質・内容を最もよく理解しており、センターへ引き渡す前に必要な処理を適切に行い、さらに、処理時に必要な注意事項をセンターに指示する義務がある。
廃液は表6の分類に従い、10 Lポリ廃液容器に貯留し、廃液の種類・性質を記入した表示札を付け、保管すること。ポリ廃液容器は無機系廃液用(白色)と有機系廃液用(赤色)の2種類があり、表示札は無機系廃液用(青色)と有機系廃液用(ピンク色)の2種類がある。表示札は有害廃液管理補助者(会計掛)が保管している。複数の実験者が共通の廃液容器を使用する場合には、性質の異なる廃液を混合しないように注意する。性質の異なる廃液を混合すると、その処理が艱難となるばかりではなく廃液容器の中で、各種の反応が進行し、有毒ガスの発生や発熱が起こり、危険である。
貯留された廃液は毎月第2火曜日に収集されるが、収集当日の午前9時30分までに、指定の場所に搬出すること。空になった廃液容器は、通常、翌月の収集日に廃液搬出場所に返却される。返却された廃液容器は速やかに実験室に持ち帰ること。(ただし、有機系廃液容器はまとめて6月、9月、11月頃に返却される。)
廃液容器を搬出する際の注意事項は次の通りである。
最終の廃液処理操作は環境保全センターで行われるが、各実験者は廃液の貯留において表6に指定された前処理を行うこと。また、有害物質を含有していない実験廃液や廃アルカリは収集の対象でないため、各実験者が中和処理などをしてから、流しに放流する。
センターにおける廃液処理は、重金属を含む無機系廃液に対して中和凝集沈殿処理、また、有機系廃液に対してはエマルジョン化後に、焼却処理を行う方式である。水溶液などに有機溶剤や油が混入していると、それらの廃液処理が極めて困難となるため、混入させないように注意すべきである。
表6.有害廃液の分類と注意事項
種類 | 注意事項 | |
無機系廃液 | クロム酸混液 |
全量(1回目の洗浄水も回収すること) |
水銀化合物溶液 |
0.005mg/L以上; 金属水銀は収集しないので、貯留槽には入れないこと |
|
一般金属化合物溶液 |
カドミウム・鉛・セレン(0.1 mg/L以上);クロム(0.5 mg/L以上);銅(3 mg/L以上); 亜鉛(10 mg/L以上); 鉄・マンガン・その他の重金属(10 mg/L以上)が対象となる |
|
写真用定着液 |
全量; 銀を回収するので、現像液やその他の廃液と混合しないこと |
|
シアン化合物溶液 |
シアン濃度、1 mg/L以上;必ず、アルカリ性にして貯留すること |
|
ヒ素化合物溶液 |
ヒ素濃度、0.1 mg/L以上; そのまま貯留すること、また、溶液のpHを表示のこと |
|
フッ素化合物溶液 |
フッ素濃度、15 mg/L以上; 酸性の溶液は中和して、貯留すること |
|
有機系廃液 |
可燃性有機溶剤 |
ベンゼンが規制の対象となり、その回収を徹底すること; PCB・爆発性ニトロ化合物・過酸化物は収集しない; 引火性溶剤は他の溶剤で十分に薄めること |
写真用現像液 |
全量;そのまま貯留すること |
|
廃油 |
PCB含有のものは収集しないので、貯留容器に入れないこと |
|
含水有機溶剤 |
水を10%以上含む有機溶剤が対象となるが、含水率を表示のこと |
|
ハロゲン系有機溶剤 |
貯留容器の表示札を参照して、該当する有機溶剤を貯留すること。 PCB含有のものは収集しないので、貯留容器に入れないこと |
水素などの可燃性ガスや一酸化炭素などの毒性ガスを使用する際には、大半の実験者は細心の注意を払って実験を行っている。しかし、爆発性や毒性のない、安全と思われている窒素ガスによってさえも、死に至る酸欠事故が発生している。一般的に、事故発生の原因の調査では、無理をした・油断をした・知らなかった・教わらなかったなどという安全に対する心構えの不備が意外に多い。
爆発性ガスは可燃性ガスと支燃性ガスの混合ガスであるが、ある特定の割合で混合すると爆発性のガスとなる。空気と混合した際の爆発限界(
表7.主なガスの空気中爆発限界(1 atm、 常温)
ガ ス | 下限値 | 上限値 | ガス | 下限値 | 上限値 |
ア セ チ レ ン | 2.5 | 81.0 | 硫化水素 | 4.3 | 45.0 |
ベ ン ゼ ン | 1.4 | 7.1 | 水素 | 4.0 | 75.0 |
ト ル エ ン |
1.4 |
6.7 |
一酸化炭素 |
12.5 |
74.0 |
シクロプロパン |
2.4 |
10.4 |
(湿気あり) |
||
シクロヘキサン |
1.3 |
8.0 |
メタン |
5.0 |
15.0 |
メチルアルコール |
7.3 |
36.0 |
エタン |
3.0 |
12.4 |
エチルアルコール |
4.3 |
19.0 |
プロパン |
2.1 |
9.5 |
イソプロピルアルコール |
2.0 |
12.0 |
ブタン |
1.8 |
8.4 |
アセトアルデヒド |
4.1 |
57.0 |
ペンタン |
1.4 |
7.8 |
ジエチルエーテル |
1.9 |
48.0 |
キシレン |
1.2 |
7.4 |
アセトン |
3.0 |
13.0 |
エチレン |
2.7 |
36.0 |
酸化エチレン |
3.0 |
80.0 |
プロピレン |
2.4 |
11.0 |
酸化プロピレン |
2.0 |
22.0 |
ブテン?1 |
1.7 |
9.7 |
塩化ビニル(モノマー) |
4.0 |
22.0 |
イソブチレン |
1.8 |
9.6 |
アンモニア |
15.0 |
28.0 |
1,3-ブタジエン |
2.0 |
12.0 |
二硫化炭素 | 1.2 | 44.0 | 四フッ化エチレン | 10.0 | 42.0 |
表8.有毒ガスの許容限界濃度(ppm)
ガス | 許容限界 | ガス | 許容限界 |
アンモニア | 25 | オゾン | 0.1 |
一酸化炭素 | 50 | ホスゲン | 0.1 |
塩素 | 1 | リン化水素 | 0.3 |
フッ素 | 1 | 二酸化イオウ | 5 |
臭素 | 0.1 | アセトアルデヒド | 100 |
酸化エチレン | 50 | ホルムアルデヒド | 5 |
塩化水素 | 5 | ニッケル・カルボニル | 0.001 |
フッ化水素 | 3 | ニトロエタン | 100 |
硫化水素 | 10 | アクロレイン | 0.1 |
シアン化水素 | 10 | メチルアミン | 10 |
臭化メチル | 15 | ジエチルアミン | 25 |
一酸化窒素 | 5 |
火災・爆発が起こる要素は可燃性ガス・支燃性ガス・発火源の存在である。この発火源としては、裸火のみならず、単なる加熱操作(あるいは、高温物体との接触)・静電気火花・衝撃・微量の触媒存在・多量の金属粉末などがあげられる。従って、可燃性ガスを取り扱う場合には、火気厳禁を表示すること。また、シラン類・有機金属化合物・金属水素化物ガスの中には、発火源がない場合でも、空気との混合で爆発するものがある。
事故の状況に応じた適切な処置がとれるように、普段から、事故が発生した場合の対策を十分に検討しておくこと。特に、避難経路の確定・保安用具の完備・発火源の除去など、事故の拡大を防止する対策を検討しておくことが必要である。
不活性ガス自体は無害であるが、酸欠事故を引き起こす危険性がある。大気の酸素濃度は約21%であるが、酸素濃度の低下に伴い、次のような症状が現れる:(a)18%以下に低下すると、頭痛やめまいが起こる、(b)15%以下になると、いわゆる酸欠状態となり、意識を失い、単独での対応は困難である。また、(c)7%付近では、短時間に意識不明・呼吸停止に陥る。従って、酸欠事故を発見した場合、救助者も酸欠状態となる危険性を念頭に置いて、二次災害につながらないように、適切な判断と対処が求められる。酸欠者を発見した場合には、まず、大声で周りの人々に状況を通知して、呼吸を止めて、酸欠者を迅速に室外へ出す。救助に数分を要する状況下での救助は、二次災害の危険性が大きいので、単独での行動は控えるべきである。
液化ガスは、気化時に大きな体積膨張と気化熱吸収が起こる。そのため、少量の漏れでも爆発限界に到達しやすく爆発の危険性が大きく、また、身体に影響を及ぼす濃度となりやすい。従って、日常的に、配管・容器・器具などの保守・点検をおこない、また、その取扱いには十分な注意が必要である。
低温液化ガスを浴びると重い凍傷になる。特に、液化ガスが軍手や衣類などに浸透した場合には、皮膚に張り付いて、脱着困難となり、重度の凍傷の原因となる。衣類に液化ガスがかかった場合には、脱着可能な衣類は脱ぎ捨て、大量の水道水で流すこと。また、液化ガスの取扱いでは、革製の手袋を使用し、軍手は使用しないこと。さらに、液化ガスを常温の容器へ注入・液化ガスの入った容器の運搬・液化ガス溶液中へ常温の物体を投入時には、液化ガスが急激に沸騰し、飛散しやすいので、特に、注意が必要である。大型の貯蔵容器から小型の容器へ移す操作も、同様に、注意して行うこと。慣れるまで、これらの操作は熟練者の立ち会いの元で行うこと。
有毒ガスは、微量でも、大きな事故につながるので、その取扱いは細心の注意が必要である。有毒ガスを使用する実験の基本は、有毒ガスを漏洩させないことであるが、万一の事故を考えて、使用前に、ガスの毒性及び吸入した場合の応急処置・解毒剤などを調査し、漏洩事故に対する適切な対処法・対応手順を検討しておくこと。また、実験に使用する容器・配管・終末処理法などを検討し、万全を期すことが要求されるている。さらに、解毒剤・ガスの種類に応じた防毒マスク・ガス中和剤などを準備し、万一の事故に備えること。周囲の人々に周知させるため、有毒ガスを使用する実験を行う場合には、「有毒ガス」使用中の掲示を行うこと。このことは、二次的な災害を防止する上で、重要である。
有毒ガスの許容濃度を
表5に示す。有毒ガスを取扱う際には、有効な防毒マスクを必ず着用し、わずかな異常を察知できるよう、神経を実験に集中させ、常時、細心の注意を払うこと。事故発生時には、生命の安全を第一とし、安全が確認できないような状況と判断される場合には、逃げる勇気と判断の速さが要求される。酸欠事故に比べると、二次災害発生の危険性がさらに高いので、有毒ガス中毒と判断される昏倒者を発見した場合には、より慎重な判断と対応が必要である。このような事故では、一呼吸で、運動機能を失う恐れがある。従って、適切な対応をとるためにも、誰が・どこで・どのような実験を行っているかを、お互いに理解しておくことが重要である。
各種の高圧で充填されたガスボンベが広く利用されている。以下に、高圧ガスボンベと圧力調整器の取扱い法に関する注意事項をあげる。
ボンベの弱点は口金であるので、地震などで転倒しないように、ボンベは必ず固定しておくこと。また、圧力調整器を付けた状態で転倒すると口金の損傷による事故を引き起こすので、ボンベの運搬時及びボンベを使用しない場合は、必ず、キャップを付けて保護すること。ボンベの元栓には、ニードルバブル式と自緊式がある。
圧力調整器ハンドルの回転方向を確認して操作すること。通常、圧力器ハンドルは逆向きになっている。すなわち、右に回転させると開き、2次側圧が上昇する。初心者はこの点が間違いやすく、閉めるつもりで、右方向に回しきった状態で、元栓を開くと、2次側の圧力計基準を超えた状態となり、さらに、対応に時間がとられると2次側圧力計のプルドン管歯車が戻らなくなったり、破裂したりして事故につながる。また、圧力調整器を取り付ける際には、ハンドルを左に回しきった状態で、元栓を開くが、その操作は調整器の側面から行うこと。また、水素ガスと酸素ガスの配管を間違えないように、水素ガスの圧力調整器の取り付けナット(左ネジ)は逆ねじとなっており、ガスの種類によりネジの径を変えている場合もある。
6.生物系分野の研究における安全指針(危険度の高い装置類の取扱い)全ての実験機器・装置は、小型・大型を問わず取扱い次第で事故につながる危険性があるため、危険度の高い装置類にはその使用マニュアルを作成し、壁や装置周辺に掲示し、注意を喚起すること。
通電中の作業は特に危険であり、また、接続部への接触は厳に避けるべきである。感電事故が発生した場合には、速やかに電源を切り、感電した人の体(手)を引き離す必要がある場合には、皮膚どうしの接触を避け、ゴム手袋などを着用して行うこと。その後、快適な場所で身体を楽にさせ、医師に連絡すること。また、必要に応じて人工呼吸や心臓マッサージを行うこと。
(1)遠心機に付属している適正なローターあるいはバケットを使用し、それぞれに許容されている最高回転数(最大遠心力)を確認し、それ以下で使用すること。特に、古いローターは使用年限によりその許容回転数は低く設定されている場合もあるので、管理責任者に確認してから使用すること。
(2)ローター及びバケットの交換を要する場合には、回転軸に正しく取り付け、きちんとはまっていることを確認すること。
(3)ローターにアンバランスが発生しないように、対称の位置にチューブやバケットを設定すること。チューブ穴の多いローターでは、対称の位置を錯覚しやすいので、特に注意せよ。
(4)運転中は、ふたを開けたり、機械本体に衝撃を与えないこと。また、回転が完全に停止するまで、ローターや回転軸に触れないこと。無理に止めることは事故につながり、また、装置の故障原因を招くことになる。
(1) 超低温槽内の試料などを取り出す場合、革製の手袋を着用して、凍傷を避けること。また、超低温槽や冷凍庫などは常に整理・整頓を心がけ、迅速に収納・取り出しが可能にして置くと、結氷の量を抑えることが可能で、装置の性能も維持される。
(2) ドライアイスの使用では、ドライアイスや冷却した容器に直接、手に触れたりすると凍傷に至ることもあるので、手袋を着用して操作するなどの注意が必要である。また、アセトン・アルコール混合のドライアイス寒剤を利用する場合には、引火事故を避ける配慮が必要である。
(3) 液化窒素を使用する装置の取扱いは熟練を必要とし、2人以上で実験を行い、事故に対応できるよう配慮すること。特に、初心者は経験豊かな指導者立ち会いのもとで実験を行うこと。
(4) 液化窒素を試料の急速冷凍などの目的に使用する際には、保護服・保護面・保護眼鏡・革製手袋などを着用し、換気に十分注意し、容器の転倒事故が起きないように配慮すること。寒剤容器、特にガラス製魔法瓶は割れやすいので注意が必要である。衣服などにしみこんだ場合には、直ちに衣服を交換し、凍傷を避けること。凍傷がひどい場合には、医師の診断を受け、適切な治療を受けること。
(5) 酸素濃度が15%以下になると、酸欠状態になり、意識がなくなる。酸欠事故は本人のみでは対応不能であり、単独の実験は厳に避けるべきである。酸欠事故が発生した場合、直ぐに新鮮な空気の場所に運び出し、人工呼吸を行い、医師を呼ぶなどの手配が必要である。
(1) 生物系の実験室などでは、紫外線照射などが微生物の滅菌などの目的に使用されることが多い。紫外線は高エネルギーで、長時間に渡り照射を、眼に受けるといわゆる雪眼といわれる眼の火傷を発生させる。従って、紫外線を直接眼にしないようにすべきである。
(2) 微生物の破砕や微粒子の懸濁などに利用されている(超)音波破砕機は高周波の音を発生し、聴覚障害を引き起こす恐れがあるため、その使用に当たっては防音などの対策を必要とする場合がある。
本研究科で利用されている研究用微生物は、大学等における研究用微生物安全管理マニュアル」(平成10年1月)の基準では、レベル1と2に相当しており、指定実験室を設け、危害防止主任者を置く必要はないが、実験は微生物実験室で行い、また、エアロゾル発生の恐れのある実験は安全キャビネット内で行うことが望ましい。さらに、研究用微生物及びこれらにより汚染されたと思われるものは該当微生物に最も有効な消毒滅菌法に従って処理すること。レベル2の研究用微生物及び組換え型微生物では、口によるピペット操作は禁止されているが、微生物を含むような溶液に対するピペット操作は全て、機械的作動型のものが望ましい。レベル2の研究用微生物及び組換え型微生物を取り扱う実験室は、室内での飲食・喫煙・化粧・食品の留置が禁止されており、また、15歳以下の者の立ち入りも禁止されている。
近年、組換え遺伝子を利用した研究が著しく発展し、組換え型微生物を利用する機会が増加している。このような組換えDNAを利用した実験については、文部省により「
大学等における組換えDNA実験指針」(平成10年4月)が公示されており、本学では「北海道大学組換えDNA実験安全管理規程」に基づいて実験を行うように定められている。必要とする手続きを経て、承認され、初めて実験が可能となる。本研究科で利用されているDNA組込み体B1P1、B1P2、B2P1、及びB2P2レベルであり、感染性・毒性を示さず、自然環境下での生存能力も低く、宿主依存性が高いものが大半である。しかし、予測外の変異により感染性・毒性が出現する可能性は極めて低いが、その可能性は否定できず、その慎重な管理が必要である。従って、組込み体を含む試料及び廃棄物の保管及び運搬では、堅固で漏れのない容器を使用し、また、実験中は実験室の窓及び扉を閉じて置くこと。実験中に汚染が発生した場合には、直ちに消毒を行うこと。さらに、初めてこの種の実験を行う者は、微生物安全取り扱い技術、物理的・生物的封じ込めに関する知識及び技術、実験の危険度に関する知識、事故発生時の措置に関する知識などの教育訓練を受けること。実験室内における感染防止(実験者自身及び他の人々の安全を確保するよう作業すること)・外部への漏出防止(不注意から微生物が実験室外に漏出して、人及び動物に感染を引き起こす可能性、あるいは、ハエ・カなどを経由する感染も可能である)が原則である。このためには、実験者が正しい無菌操作技術、消毒・滅菌法をマスターしていること、また、微生物を含む試料の責任者を明確に表示すること、実験中に微生物を含む試料や汚染物が室外に不用意に放出しないこと、専用の白衣を着用し、危険度に応じてマスクや手術用手袋を着用すること、実験後には必ず手指を消毒し、洗うこと、使用した器具・実験台を片づけ、必要に応じて消毒・滅菌操作を行うことなどが、最低限、必要である。
皮膚という感染に対する重要な防御壁がなくなるため、汚染した注射針による事故は特に問題である。その使用に当たっては刺傷事故が発生しないように十分な注意が必要であり、実験動物に注射を行う場合、動物が急に暴れたり、噛みついたりするため、その固定が必要である。
実験動物の飼育管理と実験法については、学術審議会により「
実験に利用されている動物は各種の病原体による自然感染を受けている可能性があり、飼育や実験などを通じて感染源となることがある。飼育管理の行き届いた実験動物供給機関からの汚染の低い実験動物を利用すること。また、衛生的な場所での飼育が不可欠である。かって、ラットに発生した腎症候群出血熱では、飼育者や研究者の感染・死亡事故が発生し、飼育施設の実験動物は全て廃棄処分されている。また、動物愛護の立場から、実験動物を必要以上に苦しめたり、その生命を意味なく犠牲にすることは許されない。実験動物は貴重な実験素材であり、最適な条件で飼育し、処置する場合には、動物の苦痛を最小限に抑え、屠殺時には安楽死させるようにすべきである。
実験動物の飼育は専用の飼育室で行うことが望ましく、飼育室へのハエ・ゴキブリ・カ・ダニなどの侵入を防止し、動物の排泄物・汚物・敷物などは法規に従い適切に処理し、実験動物の室外脱走を防止しすること。また、動物の毛などによるアレルギーの発生が予測されており、その取り扱い時でのマスクの着用が必要である。加えて、実験動物の咬みつきや暴れに対応する準備を行い、外傷を受けた場合、備え付けの薬剤で処置し、必要ならば医師の診断を受けること。
ヒトや動物の血液を取り扱う実験は、ウイルスなどによる感染の危険性が高く、必ず、手術用ゴム手袋または、プラスチック製手袋を着用して行うこと。切り傷などがある場合には、感染の危険性が増大するので、特に注意が必要となる。血液などを入れた容器類は5%次亜塩素酸ナトリウム(アンチホルミン)溶液で殺菌処理した後に、洗浄を行うこと。
本研究科の多くの研究者が国内及び海外での野外活動・調査を行っている。その活動範囲も都市から山間部まで、熱帯から極域まで、低地から高山まで、あるいは深海までと極めて多様な環境を含んでおり、それぞれ特殊な危険性を内包している。ここでは、特に、生物関連の危険性についてのみ触れることにする。予期しない危険獣との遭遇を避けるためには、野外活動開始前に、
現地からの情報を入手するように努めることが必要である。また、地域によっては、河川水・湖沼水が原虫・寄生虫・真菌類などにより汚染されている場合もあり、その不用意な摂水は避ける必要がある。草原・森林地帯に生存するダニ類はダニ脳炎・紅斑病・つつがむし病・ライム病・野兎病などの病原体を媒介し、ツエツエバエは嗜眠性の病気の原虫であるトリパノゾーマ病原体を媒介していることが知られている。特に、北海道・東北地方はキツネが媒介するエキノコックスの汚染地区であり、また、つつがむし病・ライム病の汚染地区であるので注意が必要である。また、海外での野外活動や調査では、現地固有の感染性微生物に対して現地の人々は相当に強い免疫を獲得しており、食物や飲料水の汚染に対しても抵抗性を保有しており、現地の人々にとり問題でない食物や飲料水が発病の原因となる場合も多いので、個人差は相当に大きいが、その心構えが必要であろう。共同利用の計算機利用にあたっては、計算機の障害(事故)は他の利用者に対して大きな損害を与える可能性があることを常に認識して、
ディスプレイ装置(VDT)を凝視する作業を長時間に渡り行うことは、目などを痛める原因となるので、
適度に休息を取りながら作業を行うこと。Eーメール、インターネットの利用で、社会的な常識を考えて、個人を誹謗したり、公序良俗に反するような情報を流すことは法律的にも禁止されている。パスワードの管理は、計算機システムのセキュリティ保全の基本であり、その管理は十分に注意して行うこと。特に、外部の計算機と連結しているネットワークでは、通信回路を経由する外部からの侵入に十分な注意が必要である。必ず、システム管理者を置き、定期的に侵入をチェックし、ルートパスワードの管理や変更を厳密に行うこと。また、通信回路からの接続法やパスワードの公開は、必要最低限にとどめること。ウイルス感染の危険性があるソフトを使用したり、持ち込まないこと。さらに、許されていないシステムへの侵入が法律上、禁止されており、絶対に行ってはいけない。
1)「火事だ」と大声で叫び、周囲の人々に知らせ、協力を求めたり、必要であれば火災報知器を作動させる。
2)小さな火災の場合には、あわてずに消火を行うが、発生原因や周囲の状況を正しく判断して、その手順や方法を間違わぬことが大切である。有機溶媒による火災発生の場合には、火元の人はかなり慌て、焦っており、一人で消火しようとして、逆に衣服などへの類焼を引き起こす結果となる。冷静に事態を判断できる他の人にその消火を任せる方がよい。しかし、消火不能と判断した場合には、迅速に避難すること。避難が遅れると火傷を始め、酸欠・一酸化中毒・煤塵による呼吸障害など重大な事故に直結する。
3)火災が拡大していない状況で、対応作業が可能であれば、周辺の可燃物を取り除き、ガスの元栓を閉じ、電源を切ること。
4)衣服などに火がついた場合には、他の人の協力で消してもらうこと。また、廊下などの広い所に出て、転がりながら消すようにするが、初めての場合には、かなり難しいと予想される。有機溶媒などを頻繁に使用する可能性のある実験者は、合成繊維や混紡の衣服を避けることが望ましい。
5)大量の可燃性及び引火性の溶媒を床などにこぼしたり、可燃性ガスボンベからガスが多量に噴出した場合には、濃度によっては爆発や火災につながるため、直ちに電源を切り、ガスバーナーなどの火を消し、窓を開放し、室内の換気をはかる。有毒ガスの発生の恐れがある場合及び多量の煙が発生した場合には、迅速に、風上に避難して、防煙マスクなどを着用して対応に当たること。防毒マスクは、ガス濃度が一定濃度以上になると防毒効果が低下するので過信は禁物である。
1)火災及びガスの発生が初期の対応で処理不能であると判断される場合には、迅速に屋外へ避難すること。避難誘導は現場にいる責任者があたり、その誘導に従うこと。
2)避難に際しては、エレベーターは使用しないこと。
3)現場の責任者は、逃げ遅れた者がないかを確認するとともに、ガスの元栓、火気源、危険物などの処理を可能な限り行い、その後、必要ならば、防火シャッターを操作し、被害の拡大を最小限にとどめるよう行動すること。防火シャッターの操作は現場責任者が行うこと。
(1) 初期の対応:1)の(1)に同じ。
(2) 火災が小規模の場合には、周囲の者は、火災の状況を研究科守衛室(0?728?4715)に連絡し、また、出火場所の責任者などの自宅に連絡すること。
(3) 火災の規模が大きく、消火不能と判断した場合には、研究科守衛室に連絡する前に、
地震の発生時期及び規模は予期不能であり、北大のキャンパスの真下で、地震が起きるとは誰も予想しないであろうが、数百年に1度の確率で、札幌付近の活断層が活動し、震度4?5程度の地震があったとの研究報告がある。地震による棚などの転倒・落下事故が発生しないように、固定化や配置の工夫などの対策は必要である。そのような対策で被害の程度はかなり軽くすることが可能であり、対策なしは極端な言い方ではあるが、無責任さにもつながることである。
地震が発生した場合には、その規模に拘らず、ただちに電気・ガス・水道などを止め、迅速に屋外に避難すること。避難にあたっては、エレベーターを使用しないこと。また、エレベーターを利用している時点で地震が発生した場合には、停止ボタンを押し、最初に停止した階でエレベーターから脱出すること。
万全の配慮を払っていても、大学院学生及び研究生が実習・研究実験・フィールド実験研究などで不慮の事故により負傷・疾病・死亡などの災害に出遭う可能性はゼロではない。このような不足の事態に備えて、「学生教育災害障害保険」が設けられている。本研究科では、全員加入を呼び掛けております。学術助成掛で加入の手続きの相談に応じております。
このマニュアルは本研究科安全委員会のWG委員がそれぞれの専攻分野に関連する項目を分担して、実験・研究の実施の上で安全確保を目標に作成した。「喉元過ぎれば何とやら」という発想で、発生した事故を忘却の彼方へ置き去りにする傾向がある。ここ10年間に限っても、本学では、工学部での液体窒素による酸欠事故、高等教育センターでのコンセント周辺の埃が原因とされる出火事故、薬学部の有機溶媒引火事故、潜水作業中に心臓麻痺による本研究科教官の死亡事故など、大きな事故が起こっている。また、正式な記録として残っていないような、小規模の事故がかなりの頻度で起きているだろうことは、学内のうわさ話などに、登場することからも予測可能である。このように事故発生の危険性は、実験室及びフィールドでの研究に内在しており、また、異常な精神状態によるうっかりや錯覚と偶然が重なり合うと、発生する可能性が高いことを示唆している。かなりの事故は日常の安全に対する心構えの不足から派生しており、日常の安全を意識した行動が事故発生を防止するための最も大切な指針である。このような観点から、安全指針を作成しましたが、特に、研究や実験に不慣れな院生、研究生の諸君は、作業に取りかかる前に、このマニュアルを一読し、関連する箇所の安全指針に精通した後、実際の作業に取りかかって欲しい。「一人一人が安全確保を意識しない限り、事故ゼロを達成することはできないのだ」ということを念頭に置いて、研究を行い、大きな成果を挙げられることを期待しております。
また、ヒヤッとしたこと、ハッとしたことを反省しながら、より安全な作業に結び付けよう。そのような「ナマ」の情報は事故防止対策を立案する上で、極めて貴重な情報源であり、口頭や書面でその対応策を含め、各専攻の安全委員会委員あるいは研究科事務(会計掛)までに報告していただければ、このマニュアルの進化につながります。
(管理責任者及び取扱責任者)
1 毒物・薬物管理責任者及び毒物・劇物取扱責任者は、各基幹講座の講座代表及び各研究室担当教官とする。
(保管及び事故防止)
2 毒物及び劇薬は、専用の保管庫で管理すること。また、冷蔵・冷凍保存を要する毒物及び劇薬は施錠可能な構造の冷蔵庫・冷凍庫を使用して管理すること。
3 保管庫は、転倒防止等の事故防止に努めること。
4 保管庫は、盗難防止等を図るため、施錠すること。
(毒物及び劇物の表示)
5 保管庫は、外部から識別できるよう「医薬用外毒物」または「医薬用外劇物」の表示を付けること。
6 容器等の表示は、毒物については赤地に白色で「毒物」と、また、劇薬については白地に赤色で「劇薬」と表示すること。この表示は受け入れ時に行い、かつ、脱着しないように工夫すること。
(受払簿)
7 毒物及び劇薬の数量は、受け払いのつど、品目ごとあるいは試薬瓶ごとの別紙様式「毒物及び劇物受払簿」またはそれに準じて記録すること。
(報告等)
8 管理責任者は、定期的に受払簿上の数量と保管量を対照し、毒物及び劇物の紛失及びそれに関連する事故等が発生した場合には、研究科長へ速やかに報告すること。
9 管理責任者は、毎年1回安全管理委員会に「毒物及び劇物受払簿」またはそれに準ずる記録を提出し、管理状況を報告すること。
(その他)
10 毒物・劇薬等に準ずる薬品類についても、この取扱いに準じて厳正に管理すること。
11 使用する見込みのない毒物及び劇物は、廃棄処分業者に引渡し、処分すること。
この要項は、平成12年 月 日から実施する。
(1)安全委員会が指定した薬品棚に、薬品類を収容すること。安全委員会は使用状況に基づいて、棚の指定を変更することがある。
(2)薬品類の収納及び搬出の際には、各自利用者が用意した記帳簿に必ず記帳すること。
(3)割り当てられた棚の使用法は各利用者に一任されるが、地震発生時においても転倒・破損事故が起きないよう工夫すること。また、薬品類の整理・整頓を定期的にチェックすること。
(4)盗難事故を防止するために、出入に際し、施錠の徹底を励行すること。
(5)薬品庫内は、当然のことながら火気厳禁である。
(6)搬入・搬出は、原則としてA棟?実験棟渡り廊下中庭側出口を利用すること。冬期間の除雪を予定しているが、利用者は積極的に除雪を行い、転倒事故の防止を心がけること。
(7)貸与された薬品庫の鍵は専攻及び講座の薬品庫管理責任者が保管・ 管理すること。他に、定期的に使用状況を把握するために、各専攻の安全管理委員・会計掛が鍵を保管・管理している。
Graduate School of Environmental Sceince, Hokkaido University