北海道大学大学院環境科学院 ガイア 本文へジャンプ
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研究紹介

GCOE特集 海外観測留学生推進室

 グローバルCOE「統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成」(以下、G-COE)には、海外観測・留学生推進室があります。どんなことを行うのか、担当者の一人石川守准教授に聞きました。

---長期的な観測はなぜ必要か
 世界各地には、自然環境の劣化に対して脆弱な地域があります。豊かな先進国ではある程度環境を修復できたり、環境劣化のツケを国外にまわしたりすることによって、自国の自然環境を見かけ上維持できます。しかし、世界の国々、特に途上国ではそのような復元力がないばかりではなく、先進国のツケをまわされることが往々にあります。そこで、そうした地域でどんな環境の変化が起きるのか、どのような対応策や適応策があるのか考える必要が出てくるのです。

 そのためにはその地域での観測に基づいたデータが必要です。1年あるいは数年規模のデータでは何か起きるか予想できません。長期的に観測したデータが必要です。5年、10年という単位では、短いですね。環境変化は次世代まで影響を与えますから、100年を考えた長期的なデータをモニタリングできる体制を残す必要があります。


モンゴルの将来を担う子どもたち

---未来へつなぐ担い手を育てるために
 こうした長期的な観測には、人材の育成が不可欠です。特に、脆弱な地域での教育はあまり確立していません。実際、現場で起きていることを、一番責任をもって観測できるのは現地の人ですから、その地域で研究者世代を超えて観測できるよう体制(人材)を育てていきたいと思っています。

 今年度はヤクーツクでサマースクールを行います。永久凍土環境下で成り立つ特異かつ脆弱な生態系の維持について現地で実習や講義も取り入れて考えていきます。

 来年度は、モンゴルでサマースクールを行います。モンゴルは、乾燥化や温暖化など気候変動が顕在化しているところです。加えて、社会体制の変化は人々を利潤追求へと指向させ,その結果,生態系の過剰利用が問題となってきています。いわゆる過放牧と言われる問題です。他方、森林衰退の問題があります。モンゴルの北部は、シベリアに広がるタイガと呼ばれる森林の南限に位置します。ここでは条件の整った場所に選択的に森林が分布しています。この森林を国家が管理できない現状があり,違法な大規模伐採が横行しています。

---地域の環境変動を直接体験してほしい
 学生の皆さんには今まさに自然環境が劣化しつつある地域に足を運んで、実際どんなことが起きているのかを体験してほしいと考えています。また、そのような地域での観測や調査を通して、フィールドに根ざした研究の意義と楽しさを学んでほしいと思います。設備の整った大学の演習林にはない大変なことが多いです。準備するのも大変、観測現場に行くのも大変です。実際、寝泊りする場所も大変ですよ。こうした研究環境が厳しいところでも、しっかりやらなければいけない研究があるということを実感してほしいのです。

グローバルCOEプログラム「統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成」は、こちらからどうぞ。



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