IFES-GCOE グローバルCOEプログラム 「統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成」
         北海道大学大学院環境科学院/農学院環境資源学専攻

グローバルCOEプログラム「統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成」
北海道大学大学院環境科学院/農学院環境資源学専攻

研究院アワー(Dr. Leonid Polyak)

日時:2009年7月14日(火)17時00分~
場所:文系共同講義棟W棟1階 W103 号室 (会場は講堂ではありません.ご注意を.)

講演者: Leonid Polyak (Ohio State University)
[レオニド・ポリアク オハイオ州立大学バード極地センター上席研究員]
演題:”Arctic Ocean history and the Climate Change”(北極海の変遷と気候変化)
座長:山本 正伸(環境科学院)

和文要旨
 過去30年間の北極域の平均気温の上昇は,全球平均気温の上昇の約2倍であり,北極域 の気候変化は今日的に注目に値する現象である.なかでも最も顕著な変化として挙げら れるのは,夏期北極海の海氷被覆の劇的な縮小であり,2007年には,被覆の減少は劇的レ ベルに達した.これらの観察にもとづき気候変化を考察すると,現在,北極は,氷の少な い状態あるいは,季節的に氷のない状態に向かい急速に変化しつつあることが示唆され る.このような状態は,人類の歴史において経験したことがなく,アイスアルベドフィー ドバックを介して気候の変化速度を加速する可能性がある.また,北極からの淡水流出 が増加し,北大西洋深層水形成を攪乱することにより,急速な気候シフトを導く可能性 もある.  北極域で起きている変化を監視し,将来を予測するモデルを発展させるため,諸機関 にまたがる大規模な研究プログラムが動き出している.将来の北極の気候と海洋システ ムの変動をフルレンジで理解するためには,比較的若い地質時代における氷が少なかっ た時代に焦点を当てた,もっと長期的な古気候記録が必要である.北極海から採取され た堆積物コアは,北極の海氷の広がりと循環の長期的変遷を記録する最良の気候アーカ イブである.しかしながら,この堆積物アーカイブを得るのは容易ではなく,海氷に覆わ れた海域の調査におけるロジスティックな問題や,堆積物データを解釈するうえでの科 学的な問題などに直面している.最近おこなわれた調査では,氷の被覆と海洋条件の変 動を解析するのに役立つ高品質の地質学的試料が得られた.2004年に行われた北極掘削 調査 (ACEX) では,5500万年前以降の新生代のかなりの時代をカバーする長期的堆積物 記録が得られた.また,第四紀古環境に焦点をあて,地理的広がりをカバーするた め,2005年には, Healy-Oden号北極海横断調査 (HOTRAX) が行われた.この調査では,北 極海を完全に横断するトランセクトにおいて平均12メートル長の20本以上の堆積物コ アと,アラスカ縁辺海から数本の堆積速度の速い(時間解像度の高い)コアが採取され た.堆積物コアのデータとマルチビーム海底地形調査および音波探査による海底下構造 調査の結果を総合することにより,海底の地史が総合的に解析された.本講演では,これ らの調査結果を概説し,北極海システムの変遷と将来的予測における意義を述べたい.

英文要旨

Polyak博士はGCOE海外研究者招聘事業によって招聘しています。

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