直線上に配置

本研究室は海洋天然物化学と化学生態学を基盤に地球環境科学に取り組むことを目標としています。
地球環境の変化に伴い、生態系も大きく変化することが頻繁になってきており、その要因は非常に多くのことがありますが、本研究室では化学物質に焦点をあてていきます。そこで、海洋無脊椎動物、藻類、微生物との生物間相互作用に関わる物質について、天然物化学的研究をスタートポイントに研究を進めています。
また、上記の研究の一環でもありますが、ラン藻、海洋生物などからの生物活性物質の探索研究も進めています。
以上の研究のために、生物、細胞を用いたアッセイ、酵素などの生化学的アッセイを積極的に開発し、化学的研究と一体化しています。
これまでの生物活性物質の単離・機器分析による構造決定・生物活性評価から遺伝子レベルでの生合成研究へと展開しています。

具体的には以下のテーマの研究を行っています。


1.海藻由来の付着阻害物質
フジツボなどの付着生物を防ぐために、船には防汚塗料が塗られています。以前使われていた有機スズ化合物はもとより、最近の代替塗料も毒性のため規制対象となっているものがあります。現在、海洋無脊椎動物から発見した付着阻害物質をリード化合物として企業と協力して実用化に向け開発を進めていますが、研究室では海藻やラン藻からタテジマフジツボのキプリス幼生に対する新規付着阻害物質を探索しています。得られた付着阻害物質のうち生態毒性がきわめて低いものについて、その活性発現機構を調べています。さらに、その生合成研究を次項で展開しています。

 

2.海藻由来の含ハロゲン化合物の生合成研究

上記テーマで海藻から得られた付着阻害物質には臭素などのハロゲンが含まれます。ハロゲンを含む化合物が多いことは海藻などの海洋生物に特徴的なことです。また、ハロゲンを含む化合物には付着阻害活性のみならず、抗がん剤として開発が期待されるような活性も見いだされています。そこで、含ハロゲン化合物の生合成機構を明らかにするため紅藻ソゾ類のバナジウム依存型ブロモペルオキシダーゼに着目して研究を進めています。

 

 

3.ラン藻(シアノバクテリア)の酵素阻害物質
ラン藻(シアノバクテリア)が酵素阻害活性を有するペプチドを多数生産することをこれまで明らかにしてきましたが、現在もこれまで単離困難であったペプチドの精製を試み、新規の酵素阻害物質を探索しています。これらの酵素阻害物質は医薬品への応用が期待されます。また、富栄養化した湖沼で大発生するアオコの生態とラン藻の2次代謝産物の関係にも興味をもっています。最近は海外で海洋ラン藻を採集し、新規生物活性物質の単離に取り組んでいます。どのテーマでもそうですが、ラン藻のペプチド研究では、私たちが管理している学内共通機器であるmicrOTOFOrbitrapといったLC/MSを大いに活用しています。

 

4.ウナギの産卵環境を決める化学的要因

 

ニホンウナギの産卵場所に関する研究は、地域の特定という点では最近達成されました。産卵地域が特定された次の段階として、私たちは化学の立場でその産卵環境を決める要因を明らかにしようとしています。


5.棘皮動物の変態誘起物質
ウニやナマコの幼生が幼体になる際の変態を誘起する物質を海藻や海藻の培養海水から探索しています。栽培漁業センターと協力して、幼生を使った生物試験を行っています。また、ナマコの変態にドーパミンが有効であることがわかりましたので、その受容体についても検討しています。


6.クロロスルフォリピド
黄金色藻Ochromonas danicaは、塩素と硫酸基を有するクロロスルフォリピドを大量に含むことで知られています。この化合物は単離困難なため、立体化学研究が約40年間なされずに止まっていましたが、私達のグループが単離に成功し、その立体配置を決定しました。クロロスルフォリピドは合成研究を含め、最近急に関心が高まっています。私達はさらに、MSを使った分析なども進めています。

トップ アイコン
トップページヘもどる

直線上に配置
研究室紹介