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北海道大学大学院環境科学院廣川研究室は大気におけるさまざまな現象を化学の視点から解明する研究を行っております。

TEL. 011-706-4528

〒060-0810 北海道札幌市北区北10条西5丁目

研究内容

研究活動の背景 ~対流圏オゾン・エアロゾルと大気の化学~

 成層圏に存在するオゾン層は、地上の生命系を有害な太陽紫外線から守るはたらきをしています。しかし、オゾンは強い毒性を持つため、対流圏、とりわけ地表付近では、人体、植物などにとって有害な大気汚染物質です。オゾンはまた、温室効果気体でもあるため、地球温暖化にも影響を及ぼします。対流圏におけるオゾンは、窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素など、おもに人間活動により排出される化学物質を原料として、太陽光の作用を受けて進行する化学反応(光化学反応)を通して生成されます。そのため、産業活動の活発化に伴い、対流圏オゾンの濃度は増加傾向にあり、大気環境における大きな問題の1つになっています。一方、大気中に浮遊する様々な粒子状物質はエアロゾルとよばれ、気候変動や人体、特に呼吸器系への影響などが指摘されています。ごく最近、ニュースなどで報じられたPM2.5もエアロゾルに含まれます。エアロゾルの中には、粒子として大気中に放出されたものの他に、大気成分の化学反応を通して生成する二次エアロゾルとよばれるものがあります。二次エアロゾルは、生成過程が複雑なため、まだ未解明な部分が多く、その大気環境へ及ぼす影響もほとんど理解されていません。私たちは、対流圏オゾンや二次エアロゾルに関わる化学反応過程の理解を目的として、室内実験研究や観測研究を行っています。室内実験研究では、対流圏オゾンの生成・消失や二次エアロゾルの成長に寄与する、不均一反応とよばれる化学反応の反応確率測定をおもに行っています。また、観測研究では、大気反応において重要な役割を示す、反応性の高い微量成分を高感度かつ高速に測定するために、質量分析法を応用した測定手法の開発を行い、実際の大気中での観測を目指しています。以下に具体的に示します。


①海塩粒子の不均一反応の研究

 大気中では、気体成分同士の反応のような均一反応(homogeneous reaction)だけではなく、気体成分と液体・固体状態のエアロゾル粒子との反応も起きており、これらは不均一反応(heterogeneous reaction)と呼ばれています。不均一反応は、成層圏オゾンホールの形成に重要な役割を果たしていることが知られていますが、最近では、対流圏大気中でも様々な不均一反応が大気化学過程に関与していることが指摘されています。例えば、北極、南極域の地表付近でのオゾンの急激な減少に対して、大気成分と海塩微粒子(エアロゾル)との不均一反応が深く関与していることが示唆されており、このような不均一反応の理解が必要となってきています。私たちは、海塩微粒子の成分である臭化物イオン、ヨウ化物イオンを含んだ水溶液とオゾンの不均一反応を対象として、オゾンの水溶液への取り込みとそれに伴うハロゲン分子(Br2I2)の発生過程を濡れ壁反応管という装置を用いて調べています。




②二次有機エアロゾル生成過程の研究

 大気中には、人間活動や植物により様々な揮発性有機化合物(VOC)が放出されています。これらのVOCは大気中の酸化過程を経て、一部がエアロゾル(粒子状物質)になります。このようなエアロゾルを二次有機エアロゾル(Secondary Organic Aerosol, SOA)といいます。SOAは、微小粒子状物質(PM2.5)に寄与していることが指摘されていますが、SOAの生成過程は複雑で理解が不充分なため、その大気環境への影響も明らかではありません。私たちは、VOCの大気酸化反応とそれに伴うSOA生成を、質量分析法や移動度測定粒径選別器(SMPS)などの手法を用いて調べています。特に、炭素-炭素二重結合を持った不飽和炭化水素のオゾンによる酸化反応と、それによる粒子生成反応に着目し、容積約1立方メートルのテフロン製のバッグ(袋)を用いた反応実験を行っています。
CEO





















③化学イオン化質量分析計を用いた亜硝酸濃度測定手法の開発

 ヒドロキシラジカルOHは、大気中に存在する主要な酸化剤の1つであり、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物等の酸化反応や、これらに伴う対流圏オゾン生成、二次有機エアロゾル生成、雨などの沈着物の酸性化において重要な役割を果たしています。亜硝酸HONOは対流圏におけるOHの主要な発生源の一つと考えられていますが、その大気中での動態については不明な点が少なくありません。本研究では、化学イオン化質量分析法という方法を用いて大気中の亜硝酸濃度を選択的かつ高感度に測定するための手法を開発しています。そしてこの方法を用いた亜硝酸の濃度測定を通して、亜硝酸の大気中での生成機構など、未解明の過程を明らかにすることを目指しています。







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