二十世紀後半の自然科学の大きな貢献の一つは、長期的時間スケールで顕在化し、広域的空間スケールで影響を及ぼす環境問題の存在を明らかにしたことにある。今では明確な自然科学的事実として認識される様々な環境問題は、これらの貢献の結果見いだされてきたものである。二十世紀後半の四半世紀は、それらの環境問題を引き起こす自然科学的機構を同定し、もたらされる時空間的結果を定量的に予測することに費やされてきた。二十一世紀はそれらの問題の長期的対策を科学的根拠をもとにして確立することが重要な課題となると予想される。その対策の一つとして,上記の環境問題を引き起こす物理・化学的過程の知見をもとにして、それが自然生態系を核となす人間・生物共生系にどのような影響を与えるか、どのような施策が有効であるかを評価同定する一連の研究が必要とされる。
そこで、このコースは、多様な構造を持つ人間・生態システムの修復と制御を可能にするために、そのシステムの構造と機構の調査研究を行うことを目的として創設されている。その目的のために、このコースでは三通りのアプローチによって研究を遂行する。一つは、野外での生態調査、観測、データ解析を組み合わせて地域の環境問題を包括的に取り扱う自然共生的アプローチ であり、また、地形・地質学的な調査研究をもとにした環境地理学的アプローチであり、もう一つは、持続可能な低炭素社会の構築を目指す分野横断型アプローチである。
したがって、このコースでは、それぞれのアプローチに関する、あるいは統合されたアプローチの専門知識および問題発見・解析能力を備えた人材群を育成する。