第一回シンポジウム「地球温暖化 −陸地から海洋へ−」


地球環境科学研究科アワーとして、本COEの中の「地球温暖化グループ」に関する研究集会を開催した。


日時: 2003年4月25日(金) 17時より 
場所: 地球環境科学研究科2階講堂



講演者:南川 雅男(地球環境変遷学講座)
      吉川 久幸(化学物質循環学講座)
      中塚 武(極域大気海洋学講座)

座長:乗木新一郎(化学物質循環学講座)

 地球温暖化チームでは、温暖化の鍵を握る炭素サイクルの構造解明に向けた研究を展開しようとしている。今回はその研究計画から3つのトピックスについて紹介した。



1)十勝川水系の物質輸送と沿岸海洋における炭素の固定(南川雅男)     

 農地からの溶出肥料や都市排水は河川を経由して内湾や沿岸に多量の栄養塩を輸送している。それとともに陸地からは微量金属や腐植物質なども供給され、沿岸での海洋プランクトンの増殖をもたらすといわれている。有機化された炭素や栄養塩は、水中と表層堆積物中で再生し、再利用されながら外洋へと輸送される。この過程で炭素の有機化と堆積物への半固定が起こっている。本研究では、このような炭素の輸送と固定が自然の物質循環にあたえる影響を正確に評価できる科学的基盤を構築するために、陸から海洋まで連続的な調査が可能な実験地域をモデルとして研究を行おうとしている。当面、陸地生態系の急激な変化が起こっている十勝平野からの輸出成分と、沿岸、大陸棚周辺における炭素循環との応答を究明することを目指す。



2)北太平洋西部海域における大気・海洋間の二酸化炭素交換に関する研究
(吉川久幸)                     

 海洋は長期的には、大気中の二酸化炭素濃度レベルを支配する炭素リザーバである。大気・海洋間の二酸化炭素交換フラックスは、通常風速の関数として表される気体移動速度と大気・海洋間の二酸化炭素分圧差の積で表される。海洋が二酸化炭素を吸収するか、放出するかは、事実上海洋表層の二酸化炭素分圧が決定している。本研究においては、北太平洋西部海域において定線での観測を実施し、海洋炭酸系の分布と変動を把握し、それらを支配する要因の解明を目指す。



3)アムール川を介した物質輸送と海洋の炭素循環(中塚 武)         
                   
 北部北太平洋は、世界で最も生物力の高い海域の1つであるが、冬季に下層から供給された栄養塩の一部が、夏季に表層で消費されずに残る海域である。一方、オホーツク海では、栄養塩は全て消費され、より生産力が高い。これは、アムール川等からの大量の鉄の供給によると考えられている。それ故、流域の環境変化は、海の生産力、CO2収支に大きく影響すると考えられ、本研究では、ロシア極東域からアムール川を経てオホーツク海・太平洋に到る、鉄やそのリガンド(腐植物質)のフラックスと変動メカニズムについて、解明することを目指す。



研究科アワーにさきだってCOE「地球温暖化」研究計画打合会を開催した。
4月25日(金)
15:00〜 南川 全体計画
15:10〜 長尾 河川から沿岸への有機物輸送とその中身
15:20〜 碓井 十勝川水系が沿岸海洋にもたらす影響評価
15:30〜 平川・鈴木 土壌浸食と河川氾濫堆積物
15:40〜 紺屋・成瀬 地球圏と生態系の相互作用
15:50〜 吉川 人為起源二酸化炭素吸収の中長期変動
16:00〜 山崎 水蒸気循環と気候モデル
16:10 入野 風送塵の役割と影響評価
16:20 山中 COCONUTSの開発と目的
16:30 中塚 アムール川におけるインキュベーション研究
16:40 南川・堀川 海洋窒素循環変動の検証
16:50 総合討論 


北海道大学 大学院地球環境科学研究院・低温科学研究所
21世紀COEプログラム「生態地球圏システム劇変の予測と回避」
〒060-0810 札幌市北区北10条西5丁目
TEL 011-706-2209 Fax 011-706-4867