第5回 シンポジウム 「紫外線影響評価グループ」

研究科アワー
       「21世紀COE紫外線影響評価グループ」を下記の日程で行いました。



日時:   2003年9月19日(金) 17時より18時 
場所:   研究科2階講堂


講演者:  東 正剛  (情報医学講座)
       長谷部 文雄(大循環力学講座)
       程木 義邦(COE特別研究員)


座長:   池田 元美(気候モデリング講座)


演題:   オゾン層破壊および紫外線の生態影響に関する研究


 成層圏大気中の塩素化合物や臭素化合物の増加傾向にはほぼ歯止めがかかったと考える研究者も少なくないが、南極オゾンホールの拡大傾向は依然としてつづいていること、中緯度や低緯度地方の成層圏でもオゾンの減少傾向が認められることから、オゾン層破壊の問題を今後とも注視していく必要がある。COE申請にあたっては、特に地球温暖化問題とオゾン層破壊の問題が密接に関連していることに着目して観測およびモデルによる研究を進めることを提案した。たとえば、温室効果ガスによる対流圏の温暖化は成層圏の気温低下をもたらすと考えられるし、温室効果ガスでもあるオゾンの減少も成層圏の気温を直接低下させるかも知れない。これにより、北極成層圏の冷却化が進むと、極渦や成層圏雲の発達を促し、北極オゾンホールを発生させる可能性もゼロとは言えない。日本最北端の総合大学である北海道大学にあって、オゾン層破壊問題と取り組む意義は大きい。

 また、オゾン層の破壊によって増加する紫外線が地球生態系にどのような影響を及ぼすのかを予測することも重要である。われわれは、特に海洋生態系における食物連鎖や物質循環に及ぼす紫外線増加の影響に着目して研究を進めている。紫外線が植物プランクトンの光合成や成長を阻害することはよく知られているが、溶存態有機物を高次栄養段階に戻す上で重要な微生物ループに及ぼす紫外線の影響もより正確に評価する必要がある。微生物ループの中で要の役割を果たしているバクテリア類の生態はこれまでブラックボックスであったが、近年における機器の発達や分子生物学的手法の導入により、かなり詳細な研究が可能となってきている。本研究ではこれらの機器と手法を駆使しながら、紫外線が地球における物質生産の要である海洋生態系に及ぼす影響を少しでも明らかにすることをめざしている。


 

 



北海道大学 大学院地球環境科学研究院・低温科学研究所
21世紀COEプログラム「生態地球圏システム劇変の予測と回避」
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