第2回 シンポジウム 「大気−植生相互作用のモデリング」


日時: 2003年5月23日(金)17時より
場所: 地球環境科学研究科2階講堂

  「大気―植生相互作用のモデリング」


要旨
 植物は、大気および土壌と相互作用を行いその結果、エネルギー・水・物質の循環が行われ陸上生態系が形成される。今日、人口増加や工業化などの人間活動および環境変化が陸上生態系に及ぼす影響が重大な問題となっている。陸上生態系の変化は、陸面における熱・水収支や微気象に影響を与え、気候システムの変化をもたらす。本研究の目的は、陸上生態系と気候システムのこれらのフィードバック過程を地域およびグローバルなスケールで解明することである。



統合モデル
 現在、プロット・スケールにおいて植生動態と物理環境(気象)の変動を記述する統合モデルMINoSGI (Multi-layered Integrated Numerical Model of Surface Physics - Growing Plants Interaction)を開発している。このモデルでは、植物群落における微気象モデル(1)と植物群落のサイズ分布動態モデル(2)が統合されている。実際の樹木群落のデータを用いてこの統合モデルの有効性について検討を行った結
果を報告する。我々の最終目標は、この統合モデルとGCMを結合し、グローバル・スケールに展開することである。


(1)植物群落における微気象モデル
 このモデルは、垂直一次元多層キャノピー・モデルであり、土壌−植物−大気系における微気象を記述する。このモデルは以下のようなプロセスを考慮している:
土壌:熱・水輸送、土壌呼吸
植物:熱・水収支、光合成、呼吸、気孔の開閉、
大気:熱・水・二酸化炭素収支、乱流拡散
放射伝達:可視(直達、散乱)、近赤外(直達、散乱)、長波放射


(2)植物群落におけるサイズ分布動態モデル
 このモデルは、植物個体の生長と枯死の結果としての植物群落のサイズ分布の変化を記述する。サイズ分布の変化は「連続の式」で与えられ、実生の新規加入の過程はその境界条件として与えられる。植物群落微気象モデルは、気象データから各サイズクラスの植物個体の光合成速度を計算する。これらの結果は、植物群落サイズ分布動態モデルに取り込まれ、次の時間ステップでの植物群落のサイズ分布が計算される。この新しいサイズ分布は再び植物群落微気象モデルに取り込まれ、植物群落における次の時間ステップでの物理環境およびそれらに対応する植物個体の光合成速度が計算される。以上のプロセスにより、植生動態と気候変動の相互作用が記述される。



シンポジウムの様子

* 写真をクリックすると大きくなります。


          



北海道大学 大学院地球環境科学研究院・低温科学研究所
21世紀COEプログラム「生態地球圏システム劇変の予測と回避」
〒060-0810 札幌市北区北10条西5丁目
TEL 011-706-2209 Fax 011-706-4867